研究実績の概要 |
1)生存戦略としての共生系獲得の多様性解析 海洋原生生物放散虫の,PolycystieaとAcanthareaのうち,いくつかの種において遊走子放出の現象を確認し,Collodaria,Nassellariaおよび Spumellariaの遊走子についてSEM, TEM, 分子系統解析をおこなった.そこで,放散虫の遊走子のサイズは数μmと,共生藻の大きさよりも小さく,有性生殖では子孫に共生藻を受け渡すことは不可能であると結論づけた(Yuasa & Takahashi 2014, 2016).しかしながら,採取地点・時期が異なっても放散虫は同じ共生藻をもち,宿主-共生体間に種特異性があることが分子系統解析から指摘されている(Gottschling & McLean 2013; Yuasa et al. 2016).本研究におけるこれらの結果から,以下の可能性が指摘される.① 放散虫は種ごとに決まった種類の共生藻を後生的に獲得する.② ひとつの放散虫には複数の種の共生藻は存在しない.③ 放散虫は海域ごとに保持する共生藻が異なる.
2)沖縄産放散虫に特有の共生体の論文を作成した(Yuasa et al. 2016, 2018 in press).放散虫には少なくとも4種類の共生体,ハプト藻,渦鞭毛藻,緑藻,シアノバクテリアが確認されており,その一つは古くから知られている渦鞭毛藻のZooxanthella nutricula で,今回あらたにGymnoxantera radiolariae sp. nov.を放散虫に共生する渦鞭毛藻の新種として記載した.今回確認された放散虫の共生体は,過去に西大西洋や地中海で報告された記録がなく,太平洋に特有のもので,海域による違いと推察される.
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