研究課題/領域番号 |
15K05336
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
土谷 信高 岩手大学, 教育学部, 教授 (50192646)
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研究分担者 |
國分 陽子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 研究副主幹 (10354870)
梅田 浩司 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (60421616)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 西南日本 / 第四紀火山 / ベリリウム10 / アダカイト |
研究実績の概要 |
27年度に引き続き,東北日本の岩手山,寒風山,三の目潟,一の目潟の火山岩類および西南日本の大山,三瓶山,および青野山火山群の火山岩類について,地質調査および岩石試料の採取,全岩化学組成の蛍光X線分析,EPMAによる造岩鉱物の化学分析を行った.その結果,若い海洋地殻が沈み込んでいる西南日本の第四紀火山岩類は沈み込んだ海洋地殻の部分溶融によって形成されたアダカイトが主体であり,古い海洋地殻が沈み込んでいる東北日本の第四紀火山岩類とはまったく異なること,西南日本の第四紀火山岩類には青野山火山群,三瓶火山,大山火山の順で大陸地殻物質の影響が大きくなることが明らかとなった. また従来から研究を行ってきた東北日本白亜紀深成岩類のSr-Nd-Pb-Hf同位体比の検討から,スラブメルティングで形成された北上山地の白亜紀花崗岩類には,海洋底堆積物よりもジルコンを含む古い大陸地殻物質の影響が顕著であることが明らかになった(Goldschmidt 2016で発表).西南日本の第四紀火山岩類のBe同位体測定については,前処理に時間がかかって測定には至らなかった.今後の測定によって,西南日本の第四紀火山岩類からベリリウム10を検出することに成功すれば,若い海洋地殻の沈み込みにおいて沈み込む堆積物は,海洋性堆積物が主体であるのか,あるいは大陸源の砕屑物が主体であるのかについての情報が得られ,また沈み込みからマグマ発生までの時間についても制約を与えることができると期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Be同位体測定の前処理に手間取り,実際の同位体比測定まで進めなかった.Be同位体測定の前処理は,岩石試料の酸分解とイオン交換によるBe抽出の2つのプロセスからなる.岩石試料の酸分解では,試料の細粉化が不足していたために時間がかかりすぎてしまった.また酸分解後の溶液にアルミニウム化合物が多く含まれ溶液の粘度が高かったため,イオン交換の際にカラムが詰まることが多く,これも時間がかかりすぎる要因となった.
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今後の研究の推進方策 |
岩石試料の細粉化については,岩石試料の粉砕工程を見直してさらなる細粉化を進めると共に,試料の分解にアルカリ溶融法やマイクロ波加熱分解法を採用し,短時間での分解法を確立させたい.また酸分解後の溶液にアルミニウム化合物が多く含まれることについては,イオン交換の前にアルミニウムを除去する工程を加える予定である.これらによって前処理時間を短縮し,できるだけ早い時期にBe同位体比の測定を実行したい. 測定後の検討については,以下の様に進める予定である.西南日本の第四紀火山岩類と北上山地の白亜紀花崗岩類の岩石学的特徴を詳細に比較することにより,沈み込む堆積物が海洋底堆積物主体であるのか,あるいは大陸側から供給される砕屑物主体であるのかについて議論することができる.さらに西南日本のアダカイト質火山岩類のBe同位体比の特徴と,微量元素含有量およびBe以外の同位体比の特徴を総合することにより,若い海洋地殻の沈み込みにおいて沈み込む堆積物は,海洋性堆積物が主体であるのか,あるいは大陸源の砕屑物が主体であるのかについての情報が得られ,また沈み込みからマグマ発生までの時間についても制約を与えることができると期待される.これらによって,アダカイト質マグマの生成における堆積物の影響について議論したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
Be同位体測定の前処理に手間取り,実際の同位体比測定まで進めなかった.このため,Be同位体測定の前処理およびBe同位体比測定に使用する消耗品費の分を次年度使用額とした.
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次年度使用額の使用計画 |
Be同位体測定の前処理およびBe同位体比測定に使用する消耗品費に充てる.
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