研究実績の概要 |
西南日本の大山,三瓶山,青野山火山群の火山岩類,および東北日本の岩手山,寒風山の火山岩類について,Be同位体比の測定を行った.その結果,10Be/9Be同位体比は大山が0.3, 17 (x10^-13以下指数部分は省略),三瓶山が0.4, 9,青野山が1.9,東北日本の岩手山が0.7,寒風山が2.5, 4.3であった.また片俣のアルカリ玄武岩は0.4と小さな値であった.これらの値はブランクの測定値である0.26よりも充分に大きく,西南日本の火山岩類からも10Beが検出されていると考えられる.しかしながら,今回測定された岩手山の焼け走り溶岩流の試料のBe同位体比を先行研究の値 (Shimaoka et al., 2016)と比較すると2桁程度低い値であり,Beの抽出過程に問題があった可能性がある.この点は今後充分に検討し,さらに精度良い測定値が得られるよう努める予定である. このほか,同一試料についてSrおよびNd同位体比の測定も行った.これらの結果からは,大山・三瓶山の火山岩類における堆積物の混入率は青野山のそれよりも50%ほど大きいことが示される.上記のBe同位体比の結果からは,大山・三瓶山と青野山における堆積物の混入率にはそれほど差がない可能性がある.以上のことは,大山の試料における堆積岩の混入が上部地殻で起こった可能性があること(Kimura et al., 2005)と調和的であると思われる.もし堆積物の混入が上部地殻起源であるとすると,上部地殻には10Beはほとんど含まれないことから,10Be/9Be同位体比は変化しないと考えられる.以上の様に,Be同位体比を詳細に検討することにより,アダカイト質マグマにおける地殻成分の起源が沈み込んだ堆積物であるか,あるいはマグマが上昇中に上部地殻からもたらされたものであるかを区別することが可能になると考えられる.
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