本年度の計画は、前年度からの不足分データの補充と取得データの解析による研究進展ということであった。前年度に試行錯誤の末、新たに導入した偏光カメラによる薄片画像解析は、鉱物粒子分布解析に比較的良好な結果をもたらした。しかし、利用しているCCDの画素数の問題でそれ以上の解析を行うことができなかった。そこで、複数の偏光方位を利用するという基本的なコンセプトはそのままに、より解像度が高く撮像できる発展的な装置を作製した。受光素子に市松模様に整列した偏光素子を被せて複数方位を同時に撮像する偏光カメラとは異なり、新装置はクロスニコル型の撮像装置であるため複数枚の撮像が必要である。この際、試料画像データの解像度の上昇の他に、複数枚の取得データを合成する際に、位置移動がなく単純画像処理が可能になるような機械構成で作製したという点も本装置の利点である。現在、本装置を用いて複数枚を自動的に撮像するためのコントローラを改造中である。また、取得画像のデータ解析を進め、粒子同定と分離を行っている。これらの画像処理データをまとめ、対象岩体の熱履歴過程の抽出を行っている。本知見は、実際の岩体の熱履歴を容易に直接的に求めることができるという点で重要であり、火山噴火の予測などにも関連するマグマ溜まりが関与するメカニズムの解明においても重要な熱履歴を、試料を得られさえすれば容易に特定できる可能性が有るという点で意義がある。
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