研究課題/領域番号 |
15K05339
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三河内 岳 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (30272462)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 角レキ化隕石 / エッジワース・カイパーベルト天体 / ニースモデル / カンラン石 / Wild2彗星 |
研究実績の概要 |
本年度は、角レキ化した隕石のうち、特にポリミクトユレイライト隕石、Kaidun隕石の2種に注目して、分析を行った。ポリミクトユレイライト隕石としては、サハラ砂漠で発見されたNWA 8179隕石について詳細な光学顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡による観察、EPMAによる鉱物組成分析、X線回折実験による相同定を行った。この隕石中には、様々な種類のユレイライト岩片に加えて、炭素質コンドライトの岩片が豊富に見られた。特にCI, CMコンドライトに属すると考えられる特徴を持つ岩片が多く見られた。しかし、これらの岩片中にはWild 2彗星塵と近い組成を持つカンラン石、輝石は見出されなかった。また、Kaidun隕石についても同様の分析を行った。Kaidun隕石はコンドライト~エコンドライトまでの多種の隕石種の岩片を含む角レキ岩隕石である。本研究では、これまでに他の隕石種では見つかっていない水質変成を受けたエンスタタイトコンドライト岩片を見出し、詳細な分析を行っている。エンスタタイトコンドライトは地球と同じ同位体組成を持つことから、地球の原材料物質になったことが指摘されているが、水などの揮発性成分は別の材料を必要とするとされ、どのような過程でもたらされたかは議論が続いている。水質変成を受けたエンスタタイトコンドライトは、地球の材料物質にそのままなり得ることから、初期地球に関して重要な意味合いを持つ可能性があり、今後も引き続き水質変成の過程についての検証を続ける予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね予定通りに研究は進行しているが、これまでのところ、明らかなEKBO物質は見つかっていない。本研究で使用している隕石は、母天体で形成後にさまざまな二次的な変成作用を受けているために、そのような影響を考慮した上で、なるべく始原的な特徴を持つ試料を吟味して分析を続けていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
現在、特に注目して分析を行っているKaidun隕石は、炭素質コンドライト、エンスタタイトコンドライトを主体とした角レキ岩であるが、これまでに知られているどの隕石グループににも属さないungroupedの試料も含んでいる。同様のことは、ユレイライトを主体とした角レキ岩隕石であるAlmahata Sitta隕石にも言える。今後は、この2試料に特にターゲットを絞って分析を続けていく予定である。Kaidunについては、共同研究者のNASAのMichael Zolensky博士と共同研究を進めており、新しい試料の提供を受ける予定である。また、Almahata Sitta隕石については、共同研究者のミュンヘン大のViktor Hoffmann博士から新しい試料の提供を受ける予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度末の残額12277円で購入予定であった消耗品がこの額よりも高かかったために、平成29年度の予算によって購入することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度分の予算を使って、予定の消耗品を購入する予定であるが、額は大きくないので、当初の全体予算の使用計画から大きな変更はない。
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