研究課題/領域番号 |
15K05340
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
森下 祐一 静岡大学, 理学部, 教授 (90358185)
|
研究分担者 |
比屋根 肇 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70192292)
臼井 朗 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 特任教授 (20356570)
|
研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
|
キーワード | 微小領域分析 / SIMS / プラチナ / 鉄マンガンクラスト / 海底鉱物資源 |
研究実績の概要 |
海底鉱物資源の一つとして注目される鉄マンガンクラストには解明すべき点が多い。自動車の排ガス浄化装置に不可欠なレアメタルであるプラチナ (Pt) などの白金族元素は、現在は陸上の鉱床から供給されているが、鉄マンガンクラストにはPtが含まれていることが知られている。本研究では、二次イオン質量分析法 (SIMS) による鉄マンガンクラストの微小領域Pt分析法を開発し、クラスト中でのPtの存在形態を解明することを目的とする。 鉄マンガンクラストの主成分は鉄・マンガン酸化物である。層状マンガン酸化物の一種である低結晶質のvernaditeは粘土鉱物に類似した構造のため、SIMS分析のために必要な標準試料に適した大きな結晶が得られない。そこで、未知試料と同一組織を持つ鉄マンガンクラストに単位面積あたりの注入原子数を正確にコントロールしたイオンを注入した標準試料を用いる。前年度には鉄マンガンクラスト中のvernaditeと基質のそれぞれにおいて、予察的な微小領域 (3 um x 3 um) 分析を行ない、vernaditeでは0.21 - 1.22 ppm、基質では検出限界(0.036 ppm)以下との定量分析結果を得て、論文公表した。今年度は鉄マンガンクラストの成長方向への深さ方向分析を目的として試料調製を行なった。試料は北大西洋の南鳥島に近い深さ3000mの海山から採取された鉄マンガンクラストを用い、成長方向に沿って4分割した。それぞれ100万年、200万年、300万年、400万年前に生成した鉄マンガンクラストを2分割し、各4試料を最新面が表面となるように深さ方向に2セット埋め込み、試料整形した。片方の埋め込み試料は分析試料とし、もう一方はイオン注入試料とした。Ptには6つの同位体があるが、イオン注入Ptビームの同位体組成を求めるために、Siウエファも埋め込み試料として調製した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で研究代表者が使用することになっていた国立研究開発法人産業技術総合研究所の高質量分解能SIMS (ims-1270 SIMS) が本年度廃棄された。このため、連携研究者が所有する東京大学大気海洋研究所の高解像度SIMS (nano SIMS) を使用して研究を継続する事となった。ims-1270 SIMSとnano SIMSは一次イオンに陽イオン(Cs+)を用い、Pt定量分析において二次イオンとして陰イオン(195Pt-)を測定する事が出来る点では共通であるが、イオン光学系が異なる。 本年度は、新たに使用するNanoSIMS用の地質用試料ホルダーを購入して分析の準備を進めた。これまでの試料ホルダーとは形状が異なるため、分析試料、イオン注入試料は径12.6 mm、Siウエファ埋め込み試料は径9.9 mmの埋め込み試料を新たに作成した。また、nano SIMSを使用する場合の最適イオン注入条件を検討した。更に、研究分担者の所属大学において研究計画の再構築と研究に使用する鉄マンガンクラストの選定などの打ち合わせを行なった。これらの作業に時間がかかったために、全体の計画がやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、カナダの研究機関に埋め込み試料を送付し、Ptイオン注入を依頼している。一方、東京大学大気海洋研究所共同利用研究に応募して今後同研究所のnano SIMSを使って研究する事が出来るようになったので、ims-1270 SIMSとのイオン光学系の相違を補正するための分析を行なう事としている。 カナダにおけるイオン注入が完了して試料が返送されれば、まずSiウエファ埋め込み試料をSIMS分析し、注入されたPtイオンの同位体組成を明らかにする。その上で、195Pt-を分析して微小領域Pt定量分析を行い、同時に鉄マンガンクラストの主成分であるFe, Mn濃度との関係やシリカ濃度、硫黄濃度との相関関係も微小領域で調べることとしている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が使用予定だった高質量分解能ims-1270 SIMSが本年度廃棄されたため、代替機種として高解像度nano SIMSを用いて研究を継続することになった。このため全体計画がやや遅れる事となり、予算の執行も一部後ろ倒しとなっている。 それぞれのSIMSで用いる試料ホルダーの設計は異なるため、その形状に合わせて分析試料を調製する必要がある。このため、イオン注入試料の作成計画はやや遅れ、本年度は新たな試料ホルダーに対応する試料の調製と役務(イオン注入)の発注、およびカナダへの試料送付までとなっている。
|
次年度使用額の使用計画 |
カナダへの試料送付とイオン注入の発注は既に行なっているため、イオン注入作業を終えた試料の返送を受けて作業完了を確認次第、次年度に支払いを行なう。
|