研究課題/領域番号 |
15K05342
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤田 清士 大阪大学, 工学研究科, 教授 (00283862)
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研究分担者 |
宇野 康司 岡山大学, 教育学研究科, 准教授 (10510745)
古川 邦之 愛知大学, 経営学部, 准教授 (20440620)
芳野 極 岡山大学, 惑星物質研究所, 准教授 (30423338)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 火山岩 / 電気伝導度 / 部分溶融 / ガラス転移 |
研究実績の概要 |
平成28年度は火山体下で実際におこりうる環境を想定した高温・高圧実験を行った。この際、 試料内の空孔、そこに含まれる水の厳密な定量評価をしなくては,真の電気伝導度測定値を得ることはできない。その為に、様々な材質を用いた試料封入ケースを作りだすことができることを目指した。特に水を含んだ試料の場合、周囲のカプセル材料との反応性が問題となるため、テスト用の試料を高温・高圧領域で電気伝導度を測定した後、走査型電子顕微鏡で試料およびカプセルの観察をおこなった。具体的には、高温領域まで、火山岩試料と反応性が少ないと推定される、アルミナ、BN、クオーツなど数種類のカプセルで反応性を精査した。同時に火山体下に存在しうる水を含む岩石の電気伝導度測定を行った。又、磁化測定では、実際の火山体下で岩石が受ける680℃以下における熱履歴データを取得した。実験では、スピナー磁力計・磁化率計等の装置を駆使して測定を行なった。 本年度は測定対象試料を流紋岩と安山岩にしぼり実験をおこなった。その結果、含水率を変化させた各試料が溶融する温度以下で、微細な電気伝導度変化が観察された。この微細な電気伝導度変化は粘性から推定されるガラス転移点付近に近いことが判明した。そのため、この微細な変化を精査し、この領域での電気伝導度のメカニズムがどのように変化するかを解明する実験を次年度も継続して行う予定である。さらに流紋岩と安山岩の磁化測定試料も増やし、温度ごとの熱履歴も精査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、流紋岩・安山岩の電気伝導度測定実験の手法は多数の予備実験によりほぼ確立した。多結晶岩石の電気伝導度測定の困難な点は、いかに絶縁し、溶融した状態で試料を測定するかである。その為、試料封入ケースの開発が研究の成否を左右する。今年度はこのための予備実験に多く時間を費やし、含水率を変えた試料の電気伝導度測定も多数おこなった。しかしながら、ピストンシリンダーで行なう測定用試料の合成は成功しないこともあり、試料内部の鉱物の粒径や均一性なども精査しながら慎重に実験を行った。 実際の電気伝導度測定実験においては、温度・圧力条件を変えながら、測定を行なった。電気伝導度測定前後での含水率測定は、フーリエ変換型の赤外分光光度計(FT-IR)を 用いた。ピストンシリンダーによる試料合成、マルチアンビルによる電気伝導度測定及びFT-IRに含水評価の一連の実験をルーチン化することができた事は本年度の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度も様々な地域の流紋岩・安山岩を用いて、電気伝導度測定・磁化測定を行う。平成28年度中の実験より、岩石の溶融温度より低いガラス転移点で電気伝導度に変化が見られるという新しい知見が見出されたため、火山体下の溶融メカニズムだけでなく、ガラス転移点付近の電気伝導メカニズムを解明する実験として完結させる。又、効率良く実験を遂行するため、岩石内の状態をモデルシュミレーションで探りながら実験を遂行することが求められる。申請者等は現実の岩石内の電気伝導度ネットワークモデルの構築に着手しており、計算機による多成分系物質の電気伝導度計算にも着手している。岩石内部をどのように電気伝導ネットワークが浸透してゆくかを今後は、実験と理論から解明してゆく。 最終的には、MT法のような電磁場観測から得られた電気伝導度構造解析結果や磁力計によって観測されるマクロな火山体の磁化構造と本実験から得られたミクロな岩石電気伝導度データ及び磁化データを対比し、総合的な電磁気モデルを提唱できることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
測定試料とそれを封入するカプセルの反応性により、予備実験の一部が予定どおり遂行できなかったため、消耗品の一部を購入することができなかったため、すべての消耗品を購入することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度である平成29年度は、予備実験及び本実験を数多く遂行する予定なので、全ての経費を適正に執行する予定である。
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