研究課題
近年,ジルコン年代学が発展しているが,ジルコンは珪酸塩鉱物であり,SiO2に枯渇した岩石には産しない。そのような岩石中のZr・REE・Th・Uはジルコノライト(CaZrTi2O7)のような酸化鉱物に分配される。ジルコノライトは月面の各種岩石をはじめ、地球では超苦鉄質岩・エメリー・超高温変成岩などから報告されている。志村は,南極大陸から、新鉱物マグネシオヘグボマイト2N4Sを発見した。この岩石中にジルコノライトが含まれている。このジルコノライトは、バデレイ石・コランダムのような、カソードルミネッセンス(CL)を示す鉱物と共生することが多い。現有のCL検出器は、メーカー仕様によりEDS検出器と作動距離が異なるため同時使用ができなかった。そこで検出器取付ポートを自分で設計・製作し、CL検出器とEDS検出器を同じ作動距離で同時使用できるように改造した。その結果、他の鉱物との共生組織を効率よく観察できるようになった。このジルコノライトの化学組成は、REE・アクチノイド・ニオブ・タンタル・タングステンなど多様な元素を含むため、35元素の精密な定量分析が必要であった。慎重な分析の結果、Ca(2+)のサイトを置換してY(3+)・REE(3+)が半分以上を占めていることが解った。過剰なプラスの電荷はTi(4+)のサイトをFe(2+)やMg(2+)などが同時に置換することでバランスをとっているようである。このジルコノライトのREEやU含有量は、過去に人工合成されたジルコノライトの最大値よりも多く、この置換関係が、高レベル核廃棄物の安定固化方法にも応用できると思われる。また、そのCHIME年代は約528 Maであることもわかった。これで当初の研究目的は達成した。現在さらに、結晶構造解析に挑戦しているが、メタミクト化が著しく難航している。これは次の研究ステップへの課題としたい。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Journal of Geodynamics
巻: 111 ページ: 15-30
doi.org/10.1016/j.jog.2017.08.001