研究課題/領域番号 |
15K05344
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
中塚 晃彦 山口大学, 創成科学研究科, 准教授 (80294651)
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研究分担者 |
藤原 惠子 山口大学, 創成科学研究科, 助手 (50253175)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 単結晶X線構造解析 / 地球内部物質 / 原子変位 / デバイ温度 / ポテンシャルパラメータ / 弾性波速度 |
研究実績の概要 |
原子の平均二乗変位(MSD)の温度依存性にデバイモデルを適用すると、個々の原子においてデバイ温度の異方性が決定できる。その結果から、弾性波速度異方性の見積もりと同時に、構造安定性の理解にとって非常に重要な原子変位に関する詳細情報の獲得も可能である。本研究課題は、地球内部物質の単結晶X線回折の温度変化実験から、地球内部での地震波の速度異常や異方性に関する知見と同時に、原子変位に関する詳細な構造情報から構造安定性に関する知見を得ることを目的とする。 平成28年度は、下部マントル最下部にあるD”層の主要構成物質であるポストペロブスカイト型MgSiO3のアナログ物質として重要なポストペロブスカイト型CaIrO3について研究を行った。フラックス法で育成した単結晶試料を用い、100~473 Kの温度範囲内の12個の温度点で単結晶X線構造解析を行った。 構造解析の結果、IrおよびCaのMSDは、両者とも、IrO6八面体間の共有稜を挟むIr-Ir方向およびCaO8多面体間の共有面を挟むCa-Ca方向に相当する[100]方向に最も大きいことがわかった。このことは、共有面・共有稜を挟む陽イオン間の斥力がそれら陽イオンどうしの熱振動を抑制するという一般的な観点から考えれば、特異的な現象である。この原因を検討するために、各原子のMSDの温度依存性から、デバイモデルに基づき、静的変位成分とデバイ温度を決定した。その結果、IrおよびCaの両原子とも、[100]方向に極めて有意な静的変位成分が観測された。その静的変位成分に基づいて求めた純粋な動的変位成分(熱振動成分)は、両原子とも、[100]方向に最も小さいことがわかった。このことは、共有稜を挟むIr-Ir間および共有面を挟むCa-Ca間で大きな斥力が存在することを示唆し、a軸の熱膨張係数が他の軸長のものよりも小さいことと調和的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
使用する装置すべてが順調に稼働しており、滞りなく研究が進んだため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ペロブスカイト型CaIrO3、ペロブスカイト型およびガーネット型MgSiO3、ガーネット型CaGeO3にも対象物質を拡張し、今年度と同様の手法を用いて実験・解析を行い、各化合物の原子変位挙動を検討し、デバイ温度・ポテンシャルパラメータを決定し、弾性波速度を求める。さらに、各化合物の高温・高圧下における相転移挙動を検討する。得られた結果を総括し、地球内部での地震波速度異方性とこれら化合物の構造安定性・構造相転移機構との関係を明らかにしていく予定である。
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