研究課題
本年度は、LA-MC-ICP-MSを用いたアパタイトのSrおよびNd同位体比測定システムの立ち上げおよび検証作業を終了した。まず、6試料のアパタイト標準試料について、研究分担者の島根大学において、TIMSを用いたSrおよびNd同位体比測定を実施した。同様の試料を九州大学のLA-MC-ICP-MSを用いて分析し、前述したTIMSと同様の測定結果を得た。また、レーザーの空間分解能を40ミクロン系まで絞ることが可能となった。仮に、65ミクロンのレーザー径を用いた場合、Sr同位体比分析に伴われる誤差は、TIMSのおおよそ5倍、Nd同位体比測定では2倍程度であり、非常に高精度での分析結果が得られた。次に、年代の異なる天然の花崗岩試料(糸島花崗閃緑岩体・黒瀬川構造帯・モンゴル、バイドラグ花崗岩体・ハンガイ花崗岩体)について、全岩のSrおよびNd同位体比測定を研究分担者の島根大学のTIMSを用いて測定した。それぞれの試料からアパタイトを分離し、SrおよびNdの同位体比測定を行った。その結果、全ての試料においてアパタイトのNd同位体比初生値は、TIMSで測定した全岩のNd同位体比初生値と同様の値をしめした。一方で、アパタイト中のSr同位体比組成は非常に不均質であり、1試料を除いて、同位体比を得ることができなかった。本結果、すなわち天然の花崗岩中のアパタイトの不均質性の検証については、非常に重要な課題であり、今後検証する必要がある。また、Sr同位対比が均質な1試料に関しては、全岩の同位体比初生値と同様の値をしめす。上述した天然の花崗岩試料については、アパタイトと同時にジルコンも分離し、Hf同位体比測定も行った。このことは、本課題の核であったLA-MC-ICP-MSを用いたSr・Nd・Hfの同位体比測定のルーチン化を完成したことをしめす。
2: おおむね順調に進展している
本申請課題の核であるLA-MC-ICP-MSを用いたアパタイトのSrおよびNd同位体比測定システムのルーチン化はすでに完成した。加えて、予想以上の空間分解能である40ミクロンでの測定が可能となった。さらに、誤差においてもTIMSのおおよそ5倍、Nd同位体比測定では2倍程度であり、非常に高精度での分析結果が得られた。さらに、ジルコンのHf同位体比測定においては約30ミクロンでの分析を可能にした。また、新たな課題として浮上した花崗岩中のアパタイトのSr同位体比の不均質性の検証は非常に重要な課題であり、後述するように来年度の課題に設定する。このように本研究は、当初の研究課題申請段階では予期していなかった成果を含みつつ、非常に順調に進んでいるとともに、予期していなかった研究結果は、局所分析によってのみ明らかとなる新たな課題を見出したといえる。
2016年度までに、LA-MC-ICP-MSを用いたアパタイトのSrおよびNd同位体比測定システムの確立と検証作業が終了した。2017年度は、これまでの成果を公表するとともに、本システムを用いた応用作業を行う。特に天然の花崗岩中のSr同位体比の不均質性についての解明を第一の目標とする。これは、一般に用いられる全岩のSr同位体比測定では得ることのできない情報をアパタイトが保持している可能性をしめすものであり、アパタイトの局所分析の価値を大きく引き上げるものである。この検証には、数試料の花崗岩からアパタイトを分離し、測定する必要がある。測定試料については現在検討中であり、測定結果から、アパタイト中のSr同位体比の不均質性の成因および全岩Sr同位体比に与える影響を考察する。
ICP-MS稼働のためのガス代の一部を別経費から充当した。島根大学での分析を研究分担者に任せたため、分析にかかる旅費
次年度使用額は僅かであり、予定通りの研究計画の中で執行する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 6件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件)
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences
巻: 111 ページ: 211-225
10.2465/jmps.150907
巻: 111 ページ: 196-210
10.2465/jmps.150727
巻: 111 ページ: 181-195
10.2465/jmps.151019b
巻: 111 ページ: 157-169
10.2465/jmps.151230
巻: 111 ページ: 145-156
10.2465/jmps.151227
巻: 111 ページ: 118-128
10.2465/jmps.151001
巻: 111 ページ: 47-49
10.2465/jmps.160420