研究課題
最終年度は,天然の花崗岩中のSr同位体比の不均質性の評価を目的として,4種類の花崗岩試料から再度アパタイトを分離し,レーザー溶出型多重検出器プラズマ質量分析計(LA-MC-ICP-MS)により,Sr同位体比の測定をおこなった.この結果から,同一試料より分離したSr同位体比の組成のばらつきは,1)1粒子のアパタイト内での組成不均一性,2)同一岩石中の粒子ごとの不均一性,3)低Sr含有量による分析誤差に起因するばらつきの3つが大きな要因であることが分かった.これらの最終年度の成果も踏まえて,本課題ではジルコン分離の際の副産物であるアパタイトからLA-MC-ICP-MSを用いた局所分析により,SrおよびNd同位体比測定手法を確立した.分析精度は,粗粒アパタイトの表面電離型質量分析計(TIMS)での比較分析により検証し,正確度や誤差において,岩石学的に十分に議論できる値であると確認した.さらに本課題で最も重要な点は,本手法を天然の花崗岩で検証したところである.天然の花崗岩のSrおよびNd同位体比を,粉砕・溶解・元素分離後TIMSにて測定し,同じ岩石試料からアパタイトおよびジルコンを分離した.分離した両鉱物から,Sr,Nd,Hf同位体比を測定した.得られたデータは,一部の不均質なSr同位体比をしめしたアパタイト(不均質性は上述した3つの理由が想定できる)を含む岩石を除いて,SrやNdともTIMSで測定した結果と類似した値をしめしたとともに,Hf同位体比についても良好な値を得た.このことは,年代測定のために分離したジルコン+残渣に濃集したアパタイトを用いることでSr,Nd,Hf全ての同位体比を得ることが可能であることをしめすとともに,それらが,岩石の同位体比とほぼ同じであり,起源マグマやマグマの多様性の議論に非常に有用であることをしめしたといえる.
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 6件)
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