研究実績の概要 |
結晶物質では、温度の増加に伴い格子振動の非調和性、すなわち調和振動からの逸脱が大きくなっていく。この非調和性の程度は、グリューナイゼン定数により表すことができる。高圧高温条件下にある地球内部物質を熱力学的に取り扱う際には、実測による熱化学および熱弾性データを地球内部温度に外挿する必要が生じる。このとき、非調和効果を求めるためのグリューナイゼン定数の温度依存性が鍵となってくる。本研究では、高圧高温下でのラマン分光測定を行うことにより、グリューナイゼン定数の温度依存性を実験から制約することが目的であった。 平成27年度、28年度および29年度前半においては、高温下で高圧ラマン分光測定を行うための加熱システムとステージ冷却用の水冷システムの整備を行い、600 Kまでの温度範囲で高圧ラマン分光測定を行うことが可能になった。平成29年度後半では、ダイアモンドアンビル高圧発生装置を用いて高圧ラマン分光測定を高温下で行った。圧力はルビー蛍光法により決定した。試料のMg2SiO4 フォルステライトを300 Kにおいて0.9, 2.7, 4.7, 6.1 GPaの異なる4つの圧力に設定した状態からスタートし、323 Kから573 Kまで50 K置きにラマンスペクトルを取得した。450K以上でもラマンピークが観測できた7つのピークについて各温度におけるモードグリューナイゼン定数を決定した。いずれのピークにおいてもモードグリューナイゼン定数は誤差の範囲内で温度依存性がないという結果が得られた。このことから、Mg2SiO4フォルステライトに関しては、モードグリューナイゼン定数の平均値である熱的グリューナイゼン定数は、600 Kまでの温度において一定であることが実験から示された。 また、熱力学パラメータを推定する際のグリューナイゼン定数の取扱いについての研究も並行して進められた。
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