研究課題
下部マントル条件下での弾性波速度測定のために、高圧セルの最適化をおこなった。放射光X線と超音波法を利用した弾性波速度測定では、X線ラジオグラフィーによって試料長さを測定し、超音波エコー測定によって超音波の伝搬時間を測定する。測定された試料長さを、超音波伝搬時間で割ることで弾性波速度を算出するが、現状の測定システムでは、超音波伝搬時間の測定誤差は0.1%、試料長さの測定誤差は数%であるため、試料長さの測定精度が弾性波速度の測定精度に大きく影響する。そこで、本年度の研究ではX線ラジオグラフィー像を鮮明化するために、X線吸収の少ない新ヒーター材の選定と高圧下での加熱テストをおこなった。今回テストしたヒーター材はTiB2+BN、TiC+Al2O3、Ti2SiC3の3種で、高融点かつX線透過性に優れたチタン化合物及びチタン化合物と軽元素の複合物を選定した。これらの物質は常圧下でヒーター材としての使用実績はあるものの、高圧下での挙動についてはほとんど知られていない。アンビルには冨士ダイス製超硬アンビルTJS01を使用し、トランケーションサイズ3.0 mmで、約30 GPaまでの高圧力下でX線ラジオグラフィー像の取得テストとヒーター特性について実験をおこなった。実験の結果、ヒーター材の平均原子量に比例して、TiB2+BN、TiC+Al2O3、Ti2SiC3の順に試料像が不鮮明となることが分かった。また、高圧下でのヒーター安定性に関して、TiB2+BNは1600℃以上の高温下で不安定化し、Ti2SiC3は2200℃以上まで安定的に加熱できたが、電気抵抗が非常に低く、加熱に大電流を必要とする。TiC+Al2O3は今回のヒーターの中で最も安定した特性を示した。これらヒーター材を今後の超音波実験に使用する。
2: おおむね順調に進展している
高圧下での弾性波速度測定に必要な要素技術を着実にテストできており、超高圧下での超音波測定の実現に近づいている。
これまで、超音波測定システム、X線ラジオグラフィー像撮影システム、高圧セルの要素技術の開発に成功している。今後はこれらの技術を組み合わせて、下部マントル条件下での弾性波速度測定実験をおこなう。
高圧セル用の部材購入が予定より少なかったため。
次年度は高圧下での超音波実験をおこなうため、上記の部材購入に助成金を使用する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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