研究課題/領域番号 |
15K05356
|
研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
米田 成一 独立行政法人国立科学博物館, 理工学研究部, グループ長 (60210788)
|
研究分担者 |
日高 洋 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10208770)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 同位体・放射年代 / 隕石 / バリウム / ダブルスパイク法 / 太陽系初期 |
研究実績の概要 |
平成28年度は引き続きダブルスパイク法によるBaの精密同位体比分析法の検討を行った。ダブルスパイク法は濃縮安定同位体2種を既知量加えることにより、測定における質量分析計内での質量分別効果を見積もって補正する方法である。現在、科研費により購入したBa-132の濃縮安定同位体と博物館の研究支援経費で購入したBa-138の組み合わせを主に試しているが、他の組み合わせも検討する必要がある。Ba-138は天然の同位体存在度が一番高く、やや測定しづらい問題点がある。代わりにBa-137も検討しているが、この核種はr-プロセスで核合成される核種で、検出を目指している消滅核種Cs-135およびその娘核種Ba-135もr-プロセスの影響が大きくいため、比較対象として測定したい核種である。これらの検討の他、従来の同位体分析法により、分化した隕石であるユークライトおよび月の表層土壌試料のBa同位体の測定を行い、国際学会で発表した。ユークライトは地球の標準物質と測定精度内でよく一致し、ユークライト母天体での大規模溶融時には同位体の均一化が起こっていたことが示唆される。一方、月試料では軽い同位体Ba-130, Ba-132と重い同位体Ba-137, Ba-138に同時に顕著な同位体過剰が見られた。前者は宇宙線による核破砕反応、後者は中性子捕獲反応によるものと思われるが、今後の検証が必要である。今後、これらの試料にもダブルスパイク法を適用し、天然の同位体分別についても調べていきたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は岩石標準試料や隕石バルク試料の測定を行う予定であったが、やや遅れている。これは主に平成27年度にダブルスパイクとするためのバリウム濃縮安定同位体の入手が遅れたためである。各核種の濃縮同位体の溶液を調製し、ダブルスパイク混合溶液として使用する核種の検討を行っている。精密同位体比測定を行うTriton表面電離型質量分析計は多少のトラブルはあったものの概ね順調に稼働しており、今後は岩石・隕石の実試料の分析を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
岩石標準試料や隕石バルク試料の精密同位体比測定を行い、ダブルスパイク法の評価を行う。続いて、国立科学博物館所有の最初にCs-135の痕跡を発見したBeardsley隕石やZag隕石について、ダブルスパイク法による測定を行う。さらに、適切な隕石試料を入手してCs-135の痕跡の検出を目指す。
|