複数の海嶺に由来するかんらん岩について、白金族を含む元素・同位体測定と鉱物分析を行い、『太古代枯渇かんらん岩』の普遍性(量と広がり)、生成年代、溶融条件を把握し、上部マントル温度や組成の抜本的見直し、及び海洋地殻形成モデルの再検討を行うために、南西インド洋海嶺(SWIR)及びケイマン海溝(CT)から得られた海洋調査船によるドレッジサンプリング試料を入手した。 これらの試料(計55試料)の薄片を作成後それらの顕微鏡下観察を行い、鉱物分離に適した試料の選別を行った。鉱物分離は、特にオスミウムを含む白金族元素の濃度が高いと考えられ、また本研究で対象としたかんらん岩中に含まれることの多いクロムスピネルを対象とした。選別した30試料の鉱物分離パイロット処理を京都フィッショントラック(株)に依頼し、30試料の内、クロムスピネル含有量が高いと見積もられた10試料のスピネル精選処理を行った。その結果、これらの10試料に対して17~53mgのクロムスピネルを入手することができた。また鉱物分離試料分析結果と対比するためおよび鉱物分離に適さない試料の分析のために全岩分析用の粉末試料の作成を行った。全岩分析試料は、海底で採取されているために海水の影響を極力取り除く塩抜きと呼ばれる脱塩作業を行い、器具にも細心の注意を払って粉砕作業を行った。これらのクロムスピネル試料と全岩試料について、現在オスミウム同位体比分析と白金族元素定量のための分解、及びEPMAによる鉱物科学組成分析を進めている。
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