研究課題
周期静電場を印加したガス領域に高強度短パルスレーザーを照射することにより電離面が形成され、電離面と周期静電場との相互作用によって電磁波が放射される.この原理はDARC(DC to AC Radiation Converter)と呼ばれ、周波数可変で高出力の電磁波源として期待され、これまで研究が行われてきた.これまでDARCの発生周波数はマイクロ波からミリ波の領域であったが、我々は最近0.5 THz 以下のサブテラヘルツの領域での電磁波発生に成功した.発生周波数は理論で予測されるようにプラズマ密度で決まる周波数の値に近いが、電磁波出力は理論と大きく異なり非常に小さい値であった(理論の4桁落ち)..この差異の原因を明らかにするために、2次元粒子シミュレーションコード(2DPIC code)を用いて解析を行い、それを実験にフィードバックすることを考えた.シミュレーションでは、発生周波数や出力は電離面の面積に強く依存することが示された.理論値に近づけるためには、電離面を無限大にする必要があり、実際の値としては、径を500ミクロン以上にすることにより十分な出力が得られることが予測された.このような状況を現有のレーザー強度を用いて実現するためには、集光光学系をこれまでから変更し、長集光点レンズを用いて集光し、プラズマ中で500ミクロンの均一なプラズマを生成する必要がある.また、用いるガスもこれまでの窒素から、低強度でも多価に電離することができるアルゴンを用いる必要があることが示された.現在、以上の準備と周辺の計測系を整備し実験準備が進行中である.
2: おおむね順調に進展している
DARCの1次元理論では、発生周波数はレーザーで生成されたプラズマ密度とDARCの構造、つまり静電場の周期に強く依存し、発生電磁波の出力は印加電場に依存することが予測されている.発生周波数については実験値は大きく異なることはないが、発生出力は小さく、理論と大きく異なっていた.この原因を探るべく、2次元のシミュレーション計算を行い、原因がプラズマの径の大きさにあることを突き止めた.十分な電磁波出力を得るために、現有の実験装置のパラメーターも勘案し、長集光点レンズによる集光と多価電離が可能なアルゴンガスを用いることにより、この問題を解決することができるとの結論を得た.昨年度までに、これらの実験装置および計測系の準備は終わっているので、今年度は、これらの実験を行う.
DARCによる高出力電磁波の発生にはレーザーで生成されるプラズマの径に強く依存することが2次元シミュレーションによってあきらかとなった.この結果を元に今年度は実験を行う.しかしながら、なぜ電磁波出力がプラズマ径に依存するのかは明らかではない.これを明らかにする必要がある.今後は実験を行うと共に、計算によりレーザー生成電離面表面での電子の動きに注目して研究を進める.つまり、電磁波発生には荷電粒子、ここでは電子の周期的運動が必要であることは電磁気学が教えるところであり、これに基づいて、電離面での電子の動きや、それに伴うプラズマ周波数で決定されると予測される時間スケールでの静電場の遮蔽などを詳細に観測しなければならないと考えている.これらの電子の動きを明確にすることにより、DARCの2次元的な理論の構築につながり、一般的なテラヘルツ電磁波源としてのDARCの可能性の評価につなげていくつもりである.
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