研究課題/領域番号 |
15K05363
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
三重野 哲 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (50173993)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小惑星衝突 / 高温ガスプルーム / 有機分子合成 / アミノ酸合成 / 軽ガス銃実験 / プラズマ発生 / 炭素微粒子発生 / タイタン |
研究実績の概要 |
内容:タイタンなどの衛星/惑星に小惑星が衝突した時、どのようなプラズマが発生し、どのような有機物が合成されるかを研究するため、2段式軽ガス銃を用いた衝突実験を行った。1気圧の窒素で満たされた与圧室に、速さ7 km/s のポリカーボネート弾を入射し、ターゲットに衝突させ、高温ガスプルームを発生させた。この高温プルームのプラズマ状態、ガス成分を測定した。また、衝突反応で発生する炭素すすを注意深く回収し、その有機物成分を分析した。高温ガスの温度は、約5000 K まで上昇し、50 μs 持続した。発生プルームは、窒素ガスとの衝突の為、高速拡散ができず、偏平型の形状となった。その中で、CNやC2分子からの強い発光が有った。ラングミュアプローブ法で電子密度を測定すると、およそ10の14乗 1/m3 であった。合成すすを熱水還流し、抽出液を液体クロマトグラフ法で定量分析した。その結果、大量のアミノ酸(グリシン、アラニンなど)が合成されていることを確認した。その含有率は、マーチソン隕石の10倍以上であった。現在、さらなるアミノ酸分析、プラズマ分析実験の準備を行っている。 意義:タイタンなど大気を持つ衛星/惑星に、かつて、大量の小惑星が衝突してきた。その合成物には、有機物も含まれ、星表面に蓄積されていると考えられる。今回のガン実験は、その小規模模擬実験であるが、種々のアミノ酸合成を証明した。 重要性:この研究は、世界に先駆けた実験研究であり、宇宙での有機物合成の過程の一つを示したと言える。現在、種々のアミノ酸合成について調査している。また、高温プルーム内の分子成分についても調査している。高温プルーム内の化学反応で、どのようにアミノ酸が合成されていくかを解明したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りJAXA宇宙科学研究所でのガス銃衝突実験を遂行できた。そして、期待される実験データ、合成炭素すす試料を得ることができた。計画にそって、2年目の研究に進むことができている。 高温ガスプルームの発生においては、高速ビデオカメラにより、高温ガスプルームの発生・成長・消滅過程を記録することができた。そして、CN分子発光のスペクトル分析より、その回転温度を得ることができた。 プラズマ測定においては、ラングミュアプローブ法により、電子密度を測定することができた。この測定を元に、電子温度を測定する測定装置を開発中である。 合成炭素すすの分析においては、純水抽出法、ダブシル化反応、および、液体クロマトグラフ法を用いた定量分析に成功した。種々のアミノ酸の測定を正確に行うことができた。今後、より多くのアミノ酸分析について、分析方法を改良して行う予定である。外部からのアミノ酸不純物混入を防ぐ為、実験装置部品の高温処理を行っている。また、予備分析を行い、この実験方法で混入する不純物の量を測定している。そして、その混入がほとんど無い結果を得ている。一方、赤外分析法においても、アミノ酸の吸収スペクトルを再現性良く得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
発生高温ガスプルーム内のプラズマ密度、電子温度を測定するため、多電極プローブを開発し、衝突実験容器に設置し、測定を行う。そして、プラズマの発生・消滅過程がどのようになっているかを解明する。 高温ガズプルーム内の分子状態を測定するため、スペクトル分析と残留ガス分析を行う。すでに、CN、C2、CH分子が測定されているが、HCN、NH3、アルデヒド分子などが合成されているかを調べる。 高温反応において、炭素微粒子が触媒的役割を果たすと思われるが、その挙動をはっきりしていない。よって、高速カメラにより、微粒子の拡散状態を観測する。一方、静電電極法により、微粒子帯電状態を測定する。微粒子のサイズは、合成炭素すすの電子顕微鏡分析から得ることができる。 アミノ酸分析においては、加水分解法と、キラル分子分析法を用いる。そして、鏡像異性体がどのくらい合成されているかと解明したい。
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