研究課題/領域番号 |
15K05372
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
池田 勝佳 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50321899)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プラズモン / 分子間相互作用 / その場観察 / テラヘルツ領域 |
研究実績の概要 |
電気化学環境下の in-situ 観察においてテラヘルツ領域の振動情報の測定は未開拓な領域である。このような低振動領域においては、電極-分子間の相互作用に関する情報をはじめ、分子間相互作用の情報や水素結合の情報など、比較的弱い相互作用に関する情報が豊富に含まれている。従来のin-situ振動分光計測で測定されてきた高振動領域においては、分子内振動に関する情報に限られるため、測定領域を低振動数側に拡張する試みは、電極反応機構の解明に役立つと期待される。平成28年度は、前年度に開発した顕微ラマン装置を用い、幾つかの電気化学モデル系について、実際にその場観察を試み、装置の性能評価及び開発した測定手法の有効性の検証を行った。 ① Au(111)とAu(100)表面に構築したチオール分子単分子膜について、テラヘルツ領域の表面増強ラマンスペクトル測定で比較を行った。基板-分子間相互作用や分子膜2次元配列の違いを反映して、100cm-1以下の低波数領域に顕著なスペクトルの違いを確認できた。また、基板面方位によるAu-S結合サイトの違いも明瞭に確認できた。更に、これらの単分子膜の還元脱離反応についてその場観察を試み、テラヘルツ振動領域の電気化学その場計測に初めて成功した。 ② 酸化還元活性を持つ分子であるフェロセンを電極表面に固定し、電気化学的に印加されたフェロセンの価数変化に伴うイオン-フェロセン間相互作用の変化を捉えるための実験や、白金電極表面の電気化学的酸化過程の計測など、いくつかのモデル系についてもテラヘルツ振動領域でのその場観察を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで電極表面のin-situ観察では全く検討されていなかったテラヘルツ振動に該当する低振動モードを観察できる装置開発を行い、実際に電気化学環境下でのテラヘルツ領域の電極表面観察に成功した。特にチオール単分子膜の還元脱離過程については、従来の分子内振動領域観察では明確な違いが確認できない2種類の試料において、テラヘルツ領域には明瞭な違いが表れる場合があることを実証でき、本手法の高い有効性が示された。 以上より、研究計画に従って研究が進行している状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はさらに測定装置の改良を進めると共に、研究計画に従って、様々なモデル分子層について表面増強ラマン観察を行い、原子・分子レベルでの電極-分子界面構造の影響、分子-分子間相互作用の影響などが低振動モードのスペクトルにどのように表れるのかを調べ、その電気化学応答について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
顕微ラマン装置の構築で使用する予定だった光学部品の一部が、より安価な部品で代用可能なことが明らかになったため、装置作製費用を抑えることが出来た。本年度の実験は予定通りの進行状況であったため、次年度予算と合わせて使用する方が予算の有効につながると判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度構築した顕微ラマン装置は励起と検出に同じ対物レンズを用いているが、励起と検出を別々の対物レンズでも行えるように改良し、多彩な条件での測定に対応できる装置を作成する予定である。
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