研究課題/領域番号 |
15K05378
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 正和 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (20361511)
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研究分担者 |
遠藤 泰樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 名誉教授 (40106159) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | クリーギー中間体 / CH2Iイオン / 可視領域 / 吸収スペクトル |
研究実績の概要 |
クリーギー中間体の可視吸収帯を探査するためのキャビティリングダウン分光(CRDs)装置の導入と、気体放電セルにより生成した窒素分子3重項励起状態のスペクトル測定は昨年度までに終えている。本年度は放電で微量に生成する不安定化学種のスペクトル測定に向け、実験装置の感度向上を図った。装置の感度を向上させるために様々な試みを行ったが、キャビティー調整に加え、分光光源であるパルス色素レーザーの発振改善と、リングダウン波形に干渉を及ぼす放電アフター・グローの最小化が、感度を保証するために特に重要なファクターであることが明らかになった。これらに注意して測定を行うことで、希ガスで0.1%に希釈したアセチレンの放電で生成するC2分子について、そのSwanバンドのスペクトルを十分な感度で観測できることが分かった。また、Swanバンドの1/10程度の遷移強度を持つPhillipsバンドのスペクトルについても十分なSN比で測定できることを確認した。 装置感度を引き出すための実験条件ついてはある程度絞り込めたため、CH2I2とO2の混合ガスを放電し、700-600 nmの領域で最も単純なクリーギー中間体CH2OOのA-X吸収スペクトル測定を試みた。予備的な分子軌道計算では、CH2OOのA状態のポテンシャルは結合性で振動構造を有するスペクトルが観測されると予想されたが、実際には明確な構造を有するスペクトルは観測されず、CH2OOの吸収の有無も判断できなかった。しかし、CH2OOのスペクトル探査の際にはCH2I2に由来するイオン種CH2I+の弱い遷移が観測されたことから、実験装置やスペクトル測定には不備がないと判断できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度中に可視吸収帯を用いたCH2OOの分光学的検出手法の確立を目指していたが、目的のスペクトル観測までに至っていない。分子軌道計算によるCH2OOの可視吸収領域とその強度の再見積もりを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
CH2OOの可視吸収波長とその強度の再見積もりを踏まえ、これまでに探査した波長領域と実験感度でCH2OOの吸収スペクトルが観測可能であるか再検討を行う。必要であれば実験条件の変更や波長領域を広げて、スペクトルの再探査を行う。また、本来はCH2OOのスペクトル測定の次のステップであると想定していた、アルキル置換クリーギー中間体CH3CHOOの可視吸収スペクトルの測定も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の実験計画よりも進捗が遅れており、速度論実験のために支出を予定していた予算を次年度使用額として繰越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
速度論実験に必要な装置・器具を購入するために使用することを計画しているが、必要に応じ、その一部を吸収スペクトル測定可能な波長領域を拡張するための高反射率ミラー購入に充てることも検討している。
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