研究課題
本研究の目的は、分子解離により量子もつれ原子ペアが生成するか、それとも量子もつれが破れるかを解明することにある。代表者の理論予測によれば、水素分子の光解離により、量子もつれ2p原子ペアが生成し、もつれ原子ペア生成は、2p原子ペアが放出するLyman-α光子ペアの角度相関測定により、検証できる。27年度においては、原子核の交換対称性が、もつれ原子ペア生成に与える影響を解明するために、HDとH2の光励起に起因するLyman-α光子ペアの角度相関関数を測定した。H2の波動関数は原子核の交換対称性を満足する必要があるが、HDの波動関数はそれを満足する必要はない。あわせてD2についても実験を行なった。D2の波動関数も、H2と同じく、原子核の交換対称性を満足する必要がある。ただし陽子がフェルミオンであるのに対し、重陽子はボゾンであるので、H2とD2では交換対称性が異なる。二つの光子検出器の対向配置に加えて、非対向配置においても角度相関を測定した。都合三つの配置における角度相関関数を、三つの水素分子に対して、これまでよりも広い角度範囲で、測定することができた。励起光としては、光子エネルギー33.66eVの直線偏光を用いた。さらに、H2, HD, D2に対してLyman-α光子ペア生成の断面積を入射光子エネルギーの関数として、30-40eVの領域にて測定した。これらの結果により、2p原子ペア生成の前駆体となる水素分子二電子励起状態の議論を大きく前進させることができた。
2: おおむね順調に進展している
三種類の水素分子(H2, HD, D2)に対し、これまでよりも広い角度範囲において、Lyman-α光子ペアの角度相関関数を測定した。また、Lyman-α光子ペア生成の断面積を入射光子エネルギーの関数として測定した。これらにより2p原子ペア生成に至る光励起過程の議論を大きく前進させることができた。
実験の高精度化に努める。必要に応じて実験装置の改良も行なう。予定通り、対象分子をパラ水素にまで拡大する。また入射光として円偏光も用いる。
当初の予想よりも、安価に角度範囲を拡大する方法を考案したこと、及び検出器(マイクロチャネルプレート)がそれほど消耗しなかったため。
検出器を交換し、高い感度により実験を行なう。このことは実験精度の向上につながる。また老朽化した真空システムの一部を更新し、能率的に実験を行なうことができるようにする。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Journal of Physics: Conference Series
巻: Volume 635 ページ: 112016~112016
10.1088/1742-6596/635/11/112016