研究課題
少数の分子で機能する電子デバイス(分子デバイス)を実現するために、電極と官能基間の相互作用を定量的に把握することは重要である。当研究課題では、構造的にデザインされた機能性自己組織化単分子膜(SAM)を用いて、官能基の電子状態が金属基板界面で「どれ程の相互作用を被るか」、「如何にして制御することが可能か」について明らかにすることを目的とした。特に、自己組織化によって実現する均質な機能性SAMについて、光励起後の電子ダイナミクスを時間分解2光子光電子(2PPE)分光法によって直接観測し、より精度の高い定量な解析を行った。くわえて、機能性SAMに異種官能基を付加し新たな機能を創出する手法の確立を目指した。本年度はまず、Au基板上のクアテルチオフェン(4T)終端アルカンチオールSAM(4TCnS-SAM; ここで、nはアルキル鎖における炭素原子の数)系で見出した「4T基における光励起寿命のn偶奇性」について、分子構造モデルを新たに提案して定量解析を行った。結果として、励起された4T基ではなく、アルキル鎖のねじれによる膜の収縮が原因であることを明らかにし、論文発表した。また、機能性SAM上に水素結合を介して異なる種類の官能基を結合する「異種2分子膜」の製膜法を確立した。まず官能基を持つSAMを従来の手法により作製し、そのSAMに水素結合を介して異なる種類の官能基を有する分子膜1層を固定することに成功した。ここでは、2層目の製膜も従来どおりの浸漬法であり、作成した膜は大気に曝しても少なくとも数十分は構造を保持することを確認した。これによって、化学合成に比べ容易に異分子からなる機能性2分子膜の作成が可能であることが示され、今後の幅広い応用が期待される。このような製膜手法は、これまでに報告された例が無く、本研究によって世界に先駆けて論文発表を行うことができた。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Surface Science
巻: 669 ページ: 160~168
10.1016/j.susc.2017.11.014
Langmuir
巻: 34 ページ: 2189~2197
10.1021/acs.langmuir.7b03451