研究実績の概要 |
本年度は、昨年度から引き続き、結合次数の線形応答関数に基づく反応場設計および関連研究と、現実の反応場設計のターゲットとなる、自由エネルギーベースでの遷移状態構造探索法の開発を並行して行った。 業績として2017年度内に論文発表は主に第二のテーマの方となるが、第一のテーマに関しても、(1)線形応答関数計算の際の摂動を空間的に分布した関数であたえられる形式に拡張し、また(2)第二テーマの成果によって自由エネルギー地形上の遷移状態を求める事が可能になったので酸解離反応の反応場設計を完成させ、さらにNアセチルグルコサミン転移酵素の反応場設計を行っており、これらの成果に関しても順次論文発表する予定である(学会発表としては国際会議の招待講演で発表済み)。ほぼ完成された第二テーマに関しては、昨年度報告書に記載したアンブレラ積分法をベースとした自由エネルギー地形の探索スキームの確立(Mitsuta et al. Int. J. Mol. Sci. 19, 937 (2018))をする事で、既存のアンブレラサンプリングやmetadynamics法とは異なり、原理上は自由エネルギー地形全体を描く事なしに重要な反応経路を探索する方法を完成、さらには、それを前田・大野らが開発した絶対温度ゼロ度での反応経路自動探索法(GRRM法:例えばS.Maeda et al. Phys. Chem. Chem. Phys. 15, 3683 (2013))と組み合わせた、自由エネルギーでの反応経路自動探索法の開発(Mitsuta et al. J. Comput. Chem. to be published)という世界で初めての、副産物としては極めて重要な成果を産んだ。
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