研究課題/領域番号 |
15K05391
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
唐 健 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (40379706)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CH5+ / 振動回転スペクトル |
研究実績の概要 |
プロトン化メタンCH5+は質量分析でよく知られている非古典的カルボンカチオンで、木星のタイタン衛星の上層大気で主な分子イオン種として検出されている。分光学において、15年前CH5+の振動回転スペクトルは観測された。しかし、CH5+の振動回転スペクトルは複雑な水素のスクランブル運動が存在するため、多くの実験的および理論的な努力が行なわれたにもかかわらずに、長い間帰属できないままの状態になっている。このことは星間空間での検出等に対して主要な障碍になっている。本研究ではCH5+の赤外-赤外二重共鳴分光を提案し、combination difference法によって基底振動状態および励起振動状態のスクランブル運動を含む回転準位の構造を探り、帰属を行い、その謎の振動回転スペクトルを解明することを目的とする。
パルス赤外レーザー(ポンプ光)とcw赤外レーザー(プローブ光)を用いて、CH5+の赤外-赤外DR分光を行うことは本研究の計画である。プローブ光は線幅の狭い(数MHz)cw赤外レーザーを使うことによって、CH5+の混雑なスクランブル運動を含む振動回転スペクトルに共通な準位に関係する遷移を見出せ、高感度な変調法で吸収信号の変化をモニターすることもできる。DR分光法によってCH5+の無規則なスペクトルの帰属を目指す。
これらに関連した成果として、C2分子の一重項と三重項間の系間禁制遷移の観測が成功し、国内外の学会で発表し、論文をJournal of Chemical Physics誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CH5+の赤外スペクトルを高感度で観測するため、光源の赤外レーザーと分子の生成に関わる超音速分子ビームの性能を改良し、ほかの分子を用いて結果を確かめた。
連続波赤外OPOレーザーはOPO結晶が老化した原因で、発振領域の範囲は狭くなり、CH5+の振動回転スペクトルを測定するには支障があるようになった。その問題を解決するため、新しいOPO結晶を購入し、発振範囲を回復し、あるいは以前より広い波長範囲をカバーできることになった。また、CH5+分子イオンの複雑のスペクトルを帰属するため、低温イオンの超音速分子ビームでの生成が重要である。いままで我々が10インチの拡散真空ポンプを用いて、超音速ビームの真空チャンバーの圧力はミリTorr以下に制限され、生成できる不安定分子種の量が少なく、分光器の感度を上げる制限に掛かっていた。その制限を解除するため、我々は拡散ポンプと同等なポンピング速度をもつターブル分子ポンプを導入した。その結果、真空チャンバー内の圧力は数十ミリTorrまで耐えられるようになって、CH5+分子イオンを生成できる濃度は一段に引き上げることは期待できる。
CH5+の二重共鳴を行うために、もう一台パルス赤外OPOレーザーが必要であるが、そのポンプレーザーは故障が発生した。様々な努力の結果、ポンプレーザーが回復され、二重共鳴の実験が再開できるようになった。次の年度にCH5+の二重共鳴を成功することに挑む。
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今後の研究の推進方策 |
次の年度では高感度な変調法を中赤外領域でCH5+のスペクトルの観測に応用する。さらに、CH5+の赤外-赤外二重共鳴分光の実験測定を全面的に行う。CH5+の二重共鳴信号観測できたら、まず強い遷移をポンプして、プローブ光を掃引することによって共通な上下状態に関わる遷移を探し出す。二重共鳴信号の観測により、大量なcombination differenceが取られることで、振動基底状態および振動励起状態での回転構造を見出すことが期待できる。
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