研究課題/領域番号 |
15K05392
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中野 晴之 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90251363)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 理論化学 / 擬縮退系 / 多配置電子状態理論 / シミュレーション手法 / 相対論的電子状態理論 |
研究実績の概要 |
本研究では、溶液内の擬縮退した複雑な電子状態の記述法としての多配置型電子状態理論、および、溶液内あるいは生体内などの環境の効果を有効に取り込み、自由エネルギー面を構築する溶液積分方程式理論の手法をあわせ開発し、溶液内の生体系・遷移金属系で、従来の方法では十分に明らかにすることのできない問題に適用することを目的としている。本年度は、研究実施計画に従い、多配置型波動関数理論および擬縮退系の相対論的電子状態理論の開発を行った。多配置型波動関数理論として、多配置SCF法の一種であるoccupation restricted multiple active spaces (ORMAS) SCF法を拡張した、一般化ORMAS-SCF法を開発した。一般化ORMAS-SCF法では、従来のORMASを完全活性空間(CAS)の積和空間ととらえ、これを一般活性空間の積和空間とすることによって拡張している。また、擬縮退系の相対論的電子状態理論として、これまで開発してきた四成分相対論的摂動論relativistic GMC-QDPT法の効率的な近似形式を新たに導出し、分子系に適用した。この近似形式では、GMC-QDPTのエネルギー分母の一部を中間状態に依存しない近似形とすることによって計算が高速化される。新たな近似形式では、内部縮約励起状態とターゲット状態とのエネルギー差をエネルギー分母の近似として用いている。評価に用いた分子系では、励起エネルギーで誤差約0.1 eVの精度を得た。なお、非相対論に対応するGMC-QDPTの近似形式の開発も同時に行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多配置型波動関数理論、擬縮退系の相対論的電子状態理論の開発、いずれの項目においても予定した手法の開発を当該年度中に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度である平成27年度に進めた多配置型波動関数理論、擬縮退系の相対論的電子状態理論の開発をさらに推進するとともに、揺らぎを含む溶液積分方程式理論の開発と光水素発生金属触媒の反応機構の解明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算機(ハイパフォーマンスコンピュータ)の購入について、機種の選定段階でより高性能の計算機が次年度発売されることになり、資金の有効利用のため本年度の購入を見送ったこと、および、参加を予定していた国際学会に急病により参加できなくなり海外旅費の剰余が生じたことがおもな理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
計算機(ハイパフォーマンスコンピュータ)の購入を行う。また、本年度参加を予定していてとりやめた国際学会で発表することになっていた内容を、次年度開催される学会において発表するため、これに伴う旅費として用いる。
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