研究課題/領域番号 |
15K05396
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
佐甲 徳栄 日本大学, 理工学部, 准教授 (60361565)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人工原子 / 量子ドット / 光と物質の相互作用 / マックスウェル-シュレディンガー / FDTD / 光閉じ込め / 波動関数 |
研究実績の概要 |
本研究では,人工原子における光閉じ込めの詳細なメカニズムと光と結合した新奇な電子状態である「光ドレスト状態」の性質を解明すること,および,その知見に基づき人工原子の光閉じ込め素子としての性能評価をすることを目的としている.
研究の二年目である平成28年度は,前年度に開発を行った,「マックスウェル - シュレディンガー連立方程式を時間領域差分法(FDTD法)に基づいて積分する計算システム」を用いて,光と相互作用する人工原子の実時間ダイナミクスのシミュレーションを実行した.光の伝播を記述するマックスウェル方程式と電子系の時間発展を記述するシュレディンガー方程式を分極電流密度を介して連立させることによって,電子系の励起によって生成する近接場と,その電子系への再作用を自己無撞着な形で取り入れた計算を行うことが可能となった.
開発した計算システムを用いて,電極と接合した人工原子を対象として,光電場によって誘起される過渡電流のシミュレーションを実行した.電子系の空間グリッドの境界に吸収ポテンシャルを導入することによって電子波束の反射を防止し,同時に境界で吸収された確率密度の算出を行うことができるように計算コードの拡張を行った.レーザーパルス照射によって,量子井戸から流れ出る電子波束を電流として計算し,その光電場の周波数およびパルス幅依存性を調べた.その結果,パルス幅の減少とともに,電流スペクトルに干渉模様のフリンジが現れることを見出した.そして,この干渉模様は人工原子内の電子波束の短時間運動を反映していることを突き止めた.また,人工原子内に誘起される時間依存電子波束が形成する動的分極と,人工原子周囲に発生する近接場の関係を調べ,その入射レーザー場依存性を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,人工原子における光閉じ込めの詳細と,光と電子系が結合した光ドレスト状態を,マックスウェル - シュレディンガー方程式の連立解法によって明らかにすることを目的としている.この研究の柱となる「連立マックスウェル・シュレディンガー方程式」を時間積分する計算システムの開発は前年に概ね修了し,平成28年度はこの計算システムを対象系に適用するフェーズへ移行した.超短パルスレーザー光が照射された人工原子系に着目し,電磁場と電子との協奏的な時間発展をマックスウェル - シュレディンガー方程式の連立解法によって計算した.その結果当初の予定通り,人工原子系の周囲に形成される近接場のシミュレーションに成功し,近接場の大きさと電子系の励起ダイナミクスとの関係を明らかにした.また,デバイスへの応用を念頭に,電極と接合した人工原子モデルを考え,光との相互作用に伴って発生する過渡電流の計算を行った.そして,過渡電流の特徴的な振舞いと入射光の中心周波数およびパルス幅との関係について新しい知見を得た.
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度である平成29年度は,前年までに開発した計算システムおよび光 - 人工原子相互作用のシミュレーションの知見に基づき,人工原子における光閉じ込めメカニズムおよびドレスト状態の詳細を明らかにする.具体的には,物質中において光の群速度を大幅に低下させるための鍵となる電磁誘起透明化現象に着目し,人工原子の共鳴周波数近傍において急峻な「透明化」を達成するための最適な条件を探る.マックスウェル - シュレディンガー連立方程式に基づく大規模数値シミュレーションを実行することによって時間依存電子波束を計算し,二体相関関数に基づく波動関数の解析を行う.また,光閉じ込めおよびドレスト状態の形成と,電子系のスピン状態との関係を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の初旬にキューバでの国際会議に招待講演のため参加予定であり,その参加登録費として今回の差額分を使用予定であったが,参加登録費の受付が予算執行期限後であったため,次年度の支払いのため未使用分として残した.
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度からの繰越分は,上記キューバでの国際会議の参加登録費として使用する.またその他の助成金については,当初の予定通り物品費および旅費として使用する.
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