研究課題/領域番号 |
15K05407
|
研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
登野 健介 公益財団法人高輝度光科学研究センター, XFEL利用研究推進室, 副主幹研究員 (00353508)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | X線自由電子レーザー / X線構造解析 / 動的構造解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、フェムト秒X線レーザーパルスを用いて液体中の微粒子の構造解析を行い、微粒子の非平均構造と機能の関係を解明することを目指す。X線自由電子レーザー(XFEL)のフェムト秒パルスで微粒子のスナップショットを大量に記録し、個別粒子の平均構造からのずれを評価する。将来的には、機能を発現している粒子をプローブするためのレーザー分光法と組み合わせることで、構造と機能の相関を明らかにする。さらに、金属微粒子、生体試料、有機物高分子、各種コロイド試料など様々な機能性物質を対象とした方法論へと一般化させる。 平成27年度には、液体試料を微小液滴としてXFEL照射位置に導入する手法を開発し、既存の回折実験装置を利用して構造解析の試行実験をXFEL施設SACLAにおいて実施した。 平成28年度には、試料導入の安定性を向上させるとともに、試料消費量を削減するために液滴式試料導入装置の改良を行った。さらに、光学レーザーと組み合わせた動的構造解析用の測定システムを構築し、試験実験を実施した。 試料導入装置の改良においては、液滴吐出ノズルの先端開口サイズと試料輸送ラインの最適化を行い、典型的な測定時間である30分間のあいだ、液滴を安定に吐出できるようになった。さらに、試料輸送ラインのデッドボリュームを小さくし、測定に必要な試料の量を半分から数分の一程度に削減することができた。 動的構造解析の試験実験については、光学レーザー導入用の光学系を備えた測定システムを構築した。光刺激によって構造変化が誘起される蛋白質の微結晶を試料とし、光学レーザーと組み合わせたポンププローブ実験を実施した。測定システムが正常に動作することを確認し、試料の回折データを取得することができた。しかし、試料の構造変化を明確に示す解析結果を得られておらず、今後、実験条件のさらなる最適化を行う必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、平成27年度には、液体試料を微小液滴としてXFEL照射位置に導入する手法を開発し、実験システムを構築した。また、SACLAを利用して構造解析の試験実験を実施することができた。平成28年度には、試験実験で明らかになった試料導入装置に関する課題を解決するための改良を行い、実用性の観点から許容できるレベルに性能を向上させることができた。さらに、機能解析への重要なステップである時間分解測定システムの構築を行い、動的構造解析の試験実験を行うことができた。 動的構造解析の実験において試料の構造変化を捉えることができず、引き続き実験条件の検討が必要となったものの、研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、時間分解測定システムを改良して安定性を向上させるとともに、実験条件を詳細に再検討し、試料の構造の時間発展を捉えることを目指す。実験で得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
|