研究課題/領域番号 |
15K05434
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
重光 保博 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (50432969)
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研究分担者 |
大賀 恭 大分大学, 工学部, 教授 (60252508)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 反応速度理論 / 溶媒効果 / 非平衡状態 / 分子動力学法 / 分子軌道法 / 自由エネルギー面 |
研究実績の概要 |
溶液化学反応における反応速度挙動は、通常の反応条件下では遷移状態理論(TST)に基づき説明される。しかし、励起状態高速反応や高圧下反応では、溶質-溶媒系の化学平衡の破綻が起こり、TST挙動から外れることが実験的に知られている。本研究の目的は、この非TST挙動の原因である「動的溶媒効果」を、計算化学アプローチで解明することである。 昨年末時点での計画に基づき、化学反応自由エネルギーを構成する化学座標自由エネルギー(溶質の反応自由エネルギー)と、溶媒和座標自由エネルギー(周辺溶媒の溶媒和自由エネルギー)を分離し、両者の結合度合を表す指標であるカップリング定数をMDシミュレーションで算出し、吸い込み項Fokker-Planck型反応拡散方程式のモデル解析解から得られるカップリング定数との比較考察を行った。古典力学レベルで評価を行う対象として、アゾベンゼン誘導体およびベンジリデンアニリン誘導体を選び、Iterative Steered MD法で求めた反応経路化学座標に沿った自由エネルギーをMDシミュレーションとメタダイナミクス計算を組み合わせて求め、溶媒和状態と溶質のみの自由エネルギーの差から、カップリング定数を求めた。 新たな試みとして、クロメン誘導体の熱戻り閉環反応に対して、Reax力場を用いた自由エネルギー計算をを実行し、カップリング定数の算出に成功した。溶媒和自由エネルギーを計算する別手段として、メタダイナミクス法の替わりに自由エネルギー表示法(ERMOD法)を検討した。古典力場MDシミュレーションから第一原理MDシミュレーションへの拡張準備として、CP2Kソフトウエアを用いた予備的計算を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結合生成・開裂を伴う反応系への拡張として、Reax力場を用いてクロメン誘導体の熱戻り閉環反応の自由エネルギー計算と化学反応0溶媒和カップリング定数の算出に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
非平衡溶媒和自由エネルギーを定量的に算出するための方法として、溶媒和shell凍結法(SUPERMOLECULE法)を開発し、カップリング係数の精度向上を目指す。定量性の高い反応経路化学座標として、Nudged Elastic band法を検討する。 溶媒-溶質カップリングが弱い系に適用してきたが、溶媒-溶質カップリングが強い反応系に対して拡張し、両方の系に対する実験と理論の比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰越助成額は、計算機部品の価格改定や、外国旅費に係る為替レート変動、に該当する。
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次年度使用額の使用計画 |
当該繰越額は、物品費(計算機部品、実験器具類)・論文投稿費・学会旅費等として適切に執行する。
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