研究課題
ヘテロ原子-ヘテロ原子結合は、単独のヘテロ原子とは異なる反応性を示すため、これまで不可能だった分子変換が実現できる可能性を秘めている。申請者は、本研究においてアミド基の窒素原子に対し、反応性制御素子としてアルコキシ基(酸素原子)を導入するアイデアを用いた「多置換アミンの3段階迅速合成法」の確立を目的とした。1段階目は「アミドとカルボニル基のカップリング反応」、2段階目は「アミドカルボニル基への求核付加反応」、3段階目は「求電子的アミノ化反応」である。(1)1段階目の「アミド基とカルボニル基のカップリング反応」を詳細に検討した。N-アルコキシ基としてN-メトキシ基を用いると、酸性条件下においてN-メトキシアミドとアルデヒドのカップリング反応が速やかに進行した。また、N-アルコキシ基として光学活性な1-フェニルエタノールを用いたところ、不斉転写型の反応が進行した。コントロール実験として、同様のカップリング反応をN-メチルアミドを用いて試みると望む生成物は全く得られず、炭素-窒素結合の重要性が明らかとなった。こうして、N-アルコキシ基を反応性制御素子ならびに立体制御素子として利用する反応の開発に成功した。(2)研究は順調に進んでおり、平成28年度に計画していた3段階目の「求電子的アミノ化反応」についても先行して検討を進めた。N-メトキシアミンに対し、触媒量のボロキシンと[Cu(OTf)]2C6H6を用いると速やかに求電子的アミノ化が進行する事がわかった。
1: 当初の計画以上に進展している
研究は順調に進行しており、平成27年度に予定していた「アミド基とカルボニル基のカップリング反応」の開発に成功した。また、平成28年度に取り組む予定であった3段階目の「求電子的アミノ化反応」に先行して取り組み、実現可能なことをすでに確認している。
平成27年度に明らかとなった求電子的アミノ化反応の最適化に取り組む。穏和な反応条件で求電子的アミノ化が進行するためには、遷移金属触媒を用いた反応の促進が必須である。求電子的アミノ化反応によく用いられる銅触媒・ニッケル触媒を中心に検討する。様々なアリール基やアルキル基が導入できるように利用可能な有機金属試薬の種類を明らかにする。
平成27年度において、当初の予定よりも多くの試薬・溶媒の購入が必要となった。一方、計上した出張費はかからなかった。その結果、9395円残った。
平成28年度では、求電子的アミノ化の研究が本格的に開始し、高額な遷移金属触媒が必要となる。このため、もともとの購入計画に加え、9,395円は試薬の購入にまわす予定である。
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