研究課題/領域番号 |
15K05436
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐藤 隆章 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70509926)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アミド / ヘテロ原子 / 含窒素化合物 / 反応性制御 / 求電子的アミノ化 / 銅触媒 |
研究実績の概要 |
ヘテロ原子-ヘテロ原子結合は、単独のヘテロ原子とは異なる反応性を示すため、これまで不可能だった分子変換が実現できる可能性を秘めている。申請者は、本研究においてアミド基の窒素原子に対し、反応性制御素子としてアルコキシ基(酸素原子)を導入するアイデアを用いた「多置換アミンの3段階迅速合成法」の確立を目的とした。1段階目は「アミドとカルボニル基のカップリング反応」、2段階目は「アミドカルボニル基への求核付加反応」、3段階目は「求電子的アミノ化反応」である。
(1)平成28年度は、1段階目の「アミド基とカルボニル基のカップリング反応」と、2段階目の「アミドカルボニル基への求核付加反応」を組み合わせ、三環性アルカロイド:ファシクラリンの不斉全合成に取り組んだ。N-アルコキシ基として光学活性な1-トリルエタノールを用いたところ、1段階目の反応が速やかに進行し、含窒素スピロ化合物を収率良く与えた。コントロール実験として、同様の反応をN-アルキルアミドを用いて試みると望む生成物はわずかしか得られなかったため、アルコキシ基の重要性が明らかとなった。こうして、得られたN-アルコキシアミドに対し、還元的シアノ化反応を用いてファシクラリンの全炭素骨格を構築した。本合成を通して、反応性制御素子ならびに立体制御素子として利用できるN-アルコキシ基の有用性が明らかとなった。現在、得られた中間体からの全合成を検討している。
(2)平成27年度に開発した「求電子的アミノ化反応」を応用し、求電子的アミド化反応の開発に成功した。求電子的なアミド化反応は、有機金属試薬から直接アミド基を構築できる有用性の高い反応であるが、その例は非常に限られていた。私達は、銅触媒存在下、安定なN-メトキシアミドをアミド化剤として用いると、求電子的アミド化反応が進行することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究は順調に進行しており、「多置換アミンの3段階迅速合成法」の各反応の反応条件を確立できた。また、開発した方法論の有用性を示す応用例として、ファシクラリンの全合成に取り組んだ。また、3段階目の「求電子的アミノ化反応」から得られた知見を活かし、新たに「求電子的アミド化反応」を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に取り組み始めたファシクラリンの不斉全合成を完結させ、開発した方法論が真に実用的な方法論であることを実証する。また、新たに見出した「求電子的アミド化反応」の最適化に取り組む。穏和な反応条件で求電子的アミド化が進行するためには、遷移金属触媒を用いた反応の促進が必須である。求電子的アミノ化反応によく用いられる銅触媒・ニッケル触媒を中心に検討する。様々なアリール基やアルキル基が導入できるように利用可能な有機金属試薬の種類を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に計上した物品費の試薬の購入が予想より多かった。一方で、旅費としての支出がなかったことから19,404円が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果が順調に得られてきた平成29 年度は、外部発表の回数が増加すると考えている。このため、もともと平成29 年度に計上した旅費に19,404円を加える予定である。
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