研究課題
分子触媒の研究開発が進み、高度に制御された効率的選択的化学反応が多数開発されているが、複数の化学反応を連動させて自在に制御/進行させる技術は遅れており、化学物質生産の持続性が損なわれる要因となっている。本研究では、生合成において持続型の物質変換/物質供給を実践する酵素に着想を得た刺激応答性動的協同機能触媒を多様に開発し、刺激応答性の構造変換を基盤とする触媒機能調節によって化学反応の空間と時間を制御することで、多成分開放系における多段階の化学変換を各段階連動させて体系的に制御/進行させることを最終的な目標としている。平成27年度は、これまでに開発してきたアゾベンゼンを基盤とする刺激応答性動的協同機能触媒の触媒機能の多様化を行った。はじめに、3,3'位に協同機能性の触媒機能を導入した触媒を種々合成した。協同機能性酸触媒機能として、ビストリチルアルコール、ビスチオウレア、ビスナフトールをアゾベンゼンに導入した触媒の合成に成功した。協同機能性ルイス塩基触媒機能として、ビスホスフィンオキシド、ビスホスホルアミドをアゾベンゼンに導入した触媒の合成に成功した。協同機能性酸/塩基複合触媒の触媒機能として、チオウレア/DMAP、チオウレア/ジメチルアミンをアゾベンゼンに導入した触媒の合成に成功した。協同機能性酸/求核剤複合触媒の触媒機能として、スルホンアミド/イミダゾールをアゾベンゼンに導入した触媒の合成に成功した。また、アゾベンゼンーチオウレア/DMAP触媒においては、置換位置を変えて導入したものも数種合成した。合成した二官能性協同機能アゾベンゼン触媒を様々な化学反応に適用し、多様な化学反応の外部刺激による活性切り替えを試みたところ、アゾベンゼンビスナフトール触媒を用いた亜鉛触媒ヘテロDiels-Alder反応において、約12倍(外挿値)の刺激応答性の触媒活性切り替えを実現した。
2: おおむね順調に進展している
計画の全ての触媒を合成できていないが、多数の触媒を合成し、刺激応答性の触媒活性調節を実現したため、概ね順調に研究は進展している。
平成28年度の研究から、数種の協同機能性刺激応答性触媒を見出している。平成28年度は、開発した触媒の刺激応答性触媒機能評価を更に進め、協同機能型アゾベンゼン触媒の多様化を実現する。効率的に研究を進めるために、新たな協同機能型アゾベンゼン触媒の開発は停止する。平成28年度の当初の計画(刺激応答性の多様化)は変更せず実施する。
研究計画が若干予定通りに進まなかったため、次年度に繰り越す。
実施できなかった研究を次年度の計画と共に行うため、次年度分の助成金と合わせて使用する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 6件) 備考 (1件)
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http://www.sut.ac.jp/fac_grad/p/index.php?67fa