研究課題/領域番号 |
15K05437
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
今堀 龍志 東京理科大学, 工学部工業化学科, 講師 (90433515)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 刺激応答性触媒 / 光応答性 / アゾベンゼン / スチルベン / 協同機能性触媒 |
研究実績の概要 |
本研究では、酵素に着想を得た刺激応答性動的協同機能触媒を多様に開発し、刺激応答性の構造変換を基盤とする触媒機能調節によって化学反応の空間と時間を制御することで、多成分開放系における多段階の化学変換を各段階連動させて体型的に制御・進行させることを最終的な目標としている。 平成28年度は、昨年度まで開発を行ってきたアゾベンゼンの刺激応答性の構造変換を利用した刺激応答性触媒の開発を継続しつつ、異なる刺激応答性の分子触媒として、スチルベンの刺激応答性の構造変換を利用した触媒の開発にも着手した。 昨年度まで開発した、協同機能性酸・塩基複合触媒であるアゾベンゼン-チオウレア/DMAP触媒、刺激応答性配位子であるアゾベンゼン-ビスBINOL触媒について、刺激応答性の改良を行った。アゾベンゼン-チオウレア/DMAP触媒は部分構造を改良することで、インドールのピルベートに対するFriedel-Crafts反応において、構造変換による触媒活性化と不活性化をそれぞれ協同的に実行可能な新しいタイプの刺激応答性動的分子触媒を開発することができた。また、アゾベンゼン-ビスBINOL触媒についてはLi-BINOLate錯体とすることで、ケトンのアルキニル化反応において、ほぼ完全に触媒活性能を切り替えることに成功した。 異なる刺激応答性の分子触媒として、スチルベンを基盤とする触媒の開発も行った。アゾベンゼンを基盤とする刺激応答性触媒として開発を終えている協同機能型の酸触媒であるビストリチルアルコールに、スチルベンを導入した触媒を開発した。しかしながら、合成した触媒をMorita-Baylis-Hillman反応に適用したところ、期待した触媒活性は見られなかった。単純にスチルベンをアゾベンゼンの代わりに用いることで、異なる刺激による刺激応答性触媒を構築できるわけでないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り研究を進めているが、異なる外部刺激による刺激応答性触媒を実現するために開発したスチルベンを基盤とする触媒が、期待したアゾベンゼンを基盤とする触媒と同様な反応性を示さなかったために、改良が必要となっている。
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今後の研究の推進方策 |
アゾベンゼンを基盤とする刺激応答性触媒は、数種類の異なる触媒を見出しており、順調に研究が進んでいる。今後、さらなる改良を行い、より良い刺激応答性触媒の開発を実現する。 スチルベンを基盤とする刺激応答性触媒は、アゾベンゼンを基盤とする触媒を同様な触媒機能を発現できるように構造を改良する。 上記の想定外の研究を行う必要があるが、対応可能であると判断し、平成29年度の当初の計画は変更せずに実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
担当の学生数名が3月から就職活動に入り、当初予定していた有機合成試薬の購入が一部なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
担当の学生の就職活動が終了したため、平成29年度の助成金と合わせて有機合成試薬を購入する。
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