研究課題
本研究では、酵素に着想を得た刺激応答性動的協同機能触媒を多様に開発し、刺激応答性の構造変換を基盤とする触媒機能調節によっ て化学反応の空間と時間を制御することで、多成分開放系における多段階の化学変換を各段階連動させて体型的に制御・進行させるこ とを最終的な目標としている。 平成29年度は、アゾベンゼンの刺激応答性の構造変換を利用した刺激応答性触媒と、スチルベンの刺激応答性の構造変換を利用した触媒を組み合わせたマルチ触媒システムの開発に着手する予定であったが、昨年度までにスチルベンを基盤とする効果的な刺激応答性触媒を開発できておらず、引き続き開発を行った。これまでに開発しているアゾベンゼン-チオウア/DMAP触媒の刺激応答性部位をスチルベンに変更した触媒を設計し、開発を試みたが、現時点で完成していない。今後、引き続きスチルベンを基盤とする刺激応答性触媒開発の開発を行い、完成後にアゾベンゼンを基盤とする刺激応答性触媒と組み合わせることで、マルチ触媒システムの開発を行う予定である。また、触媒活性ではなく、化学反応の種類を切り替える刺激応答性触媒の開発も行った。基質認識部位と触媒活性中心の空間配置をアゾベンゼンの刺激応答性の構造変換によって切り替える刺激応答性リン配位子の開発を行い、ジブロモフェノール誘導体の熊田カップリングの位置選択性切り替えを試みた。刺激応答性リン配位子の設計、合成、評価、改良のサイクルで第3世代まで触媒の改良を進めたが、残念ながら熊田カップリング反応の位置選択性を切り替えることはできなかった。開発した触媒では、基質認識部位と触媒活性中心の空間配置の切り替えによる熊田カップリング反応の位置選択性制御は困難であると判断し、現在、新たな触媒の設計と異なる触媒系の開発に移行している。
すべて 2017
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