研究課題
本年度の研究計画は,カルベン(2価2配位炭素化合物)と異なる新しい炭素配位子として期待されているカルボン(0価2配位炭素化合物)の電子供与能の定量的な評価方法に関する調査とカルボンを配位子とした触媒系の構築を目的とし,1)13族カチオン付加物を用いた,電子供与能の定量的評価方法の開拓と,2)カルボン単核金(I)および2核金(I)錯体の合成について検討した。1)については,ビス(イミノスルファン)カーボン(0) (BiSC)とボランをベンゼン中で反応させることで,BiSC-ボラン付加物を合成した。化合物の同定は,11B 核磁気共鳴 (NMR) 測定により行い-22.6 ppmに,目的とする化合物の生成を示唆するシグナル が観測された。次に,ボレニウムカチオン付加物の合成を目的に,BiSC-ボラン付加物を,B(C6F5)3 で脱ヒドリド化したところ,11B NMR測定から 57.7 ppm付近に,ボレニウムカチオンに相当するブロードなシグナルが観測された。このピーク値は,ビスホスファンカーボン(0)(BPC)-ボレニウムカチオン付加物の値 (56.6 ppm) と比較して低磁場側であったことから,BiSCのπ電子供与能は,BPCより低いことが示唆された。2)については,ビス(カルコゲナン)カーボン(0) や,スルファン(ホスファン)カーボン(0)を銀(I)塩存在下,トリフェニルホスファン金(I)クロリドと反応させることで,目的とする単核および2核金(I)錯体を合成した。得られた単核金(I)錯体および,2核金(I)錯体においては,分子構造をX線構造解析により明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
1)カルボンの電子供与能の定量的評価方法に関する研究では,BiSC-ボレニウムカチオン付加物の生成を11B NMR測定から示唆した。今後,種々のカルボンの電子供与能の系統的評価を目指して,対応するカルボン-ボレニウムカチオン付加物の合成を試みる。2)種々のカルボンの単核金(I)および2核金(I)錯体の合成に成功したので,今後,その触媒能に関する調査を行う。
1)については,種々のカルボン-ボレニウムカチオン付加物の合成を検討を行うが,ホウ素核のNMRでは,シグナルのブロードニングにより,正確なピーク値の評価が難しいことが予期出来る。今後は,カルボン-ホスフェニウムカチオン付加物の合成も試み,種々のカルボンの電子供与能の評価を行う予定である。2)については,合成した種々のカルボン-金(I)錯体の触媒能の検討を行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Phosphorus, Sulfur, and Silicon, and the Related Elements
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http://kenkyu-web.cin.nihon-u.ac.jp