研究課題/領域番号 |
15K05438
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
藤井 孝宜 日本大学, 生産工学部, 教授 (00283060)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カルボン / 0価2配位炭素化合物 / カルボン-銀(I)錯体 / 銀(I)クラスター / 多座配位 / ホスホニウムカチオン |
研究実績の概要 |
本研究計画は,カルベン(2価2配位炭素化合物)と異なる新しい炭素配位子として期待されるカルボン(0価2配位炭素化合物)と呼ばれる化合物群に着目し,配位元素代替えに伴う0価2配位炭素の電子供与能の定量的な評価に関する研究とそれらカルボンを配位子とした新規カルボンベース触媒系の構築を目的とし,1)ホスホニウムカチオン付加物及びホスホニウムジカチオン付加物の合成を検討し,電子供与能の定量的評価方法の開拓と,2)当研究室で合成した硫黄原子に安定化したカルボン類の配位のを活用した銀錯体の合成について検討した。
1)については,ビス(イミノスルファン)カーボン(0)(BiSC)を用いて,種々のホスファンとの反応によりBiSC-ホスホニウムカチオン付加物の合成を試みた。31P NMR測定において,目的化合物と考えられシグナル(160 ppm) が観測されたが,ホスホニウムカチオン付加物からの脱塩素化によるBiSC-ホスホニウムジカチオン付加物の生成には至らなかった。
2)については,BiSC,イミノスルファン(スルファン)カーボン(0)(iSSC)及び,イミノスルファン(セレナン)カーボン(0)(iSSeC)を種々の当量で銀(I)イオンとの反応を行ったところ,それぞれ対応する1,2,4核のカルボン-銀(I)錯体が得られた。これらの錯体の分子構造はX線構造解析により明らかにし,特に,4核銀(I)カルボン錯体では,カルボン炭素の2つのローンペアとイミノスルファン窒素のローンペアが配位性能を示すことで,カルボン化学種として,多座配位子能を示すはじめての例となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)昨年度,カルボンーボレニウムカチオン付加体の合成ならびにホウ素核のNMR測定に成功した。今年度は,測定方法の範囲を広げるべく,カルボン-ホスホニウムカチオン付加体を合成し,リン核のNMRデータの知見を得た。今後,カルボンの電子供与能の系統的評価方法を目指して,ab initio計算を活用する。
2)昨年度,イミノスルファンを有するビス(カルコゲナン)カーボン(0)(BChC)のAu(I)イオンとの反応を試み,カルボン炭素の特徴的性質を示す2核Au(I)錯体の合成成功している。今年度は,BChCとAg(I)イオンとの反応を試みたところ,カルボン炭素の2つのローンペアとイミン窒素のローンペアを活用した4核Ag(I)クラスターの合成にはじめて成功した。今後,BChCの金属錯体の触媒能の評価を行う。
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今後の研究の推進方策 |
1)については,カルボン-ボレニウム,-ホスホニウム付加物のホウ素核及び,リン核のNMRデータが得られたので,この知見を基に,ab initio計算による電子供与能を見積もる予定である。
2)については,もっとも配位能が大きいと考えられるジスルファンカーボン(0)を調整し,その4電子供与能について明らかにする。また,BiSCのようにイミン窒素をもつカルボンは,多座配位することが分かったので,金(I)及び銀(I)を含む多核錯体の合成も試みる。さらに,カルボン-金属錯体においては,その触媒能についての調査を行う。
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