二次元構造を有する5元系遷移金属カルコゲナイドを固相反応法で合成を試みた。目的相は銅にカルコゲナイドイオンが4配位し、CuS4四面体が陵共有した層と遷移金属Mに酸素が5配位し、MO5ピラミッドが頂点共有した層とが交互に積層した構造をとっており、CuとMをに注目すると、これらの元素は正方格子を形成している。 これまでの成果からXPS測定、メスバウア分光測定、磁化率測定などからCuは1価、Mは3価であることが分かっており、遷移金属が低温で磁気転移を示すことを見出してきた。しかしながら、上記の構造は粉末X線回折ではCuとMとを区別することが困難なことから、断定できずにおり、また酸素の位置も厳密に決定することができていなかった。 今回は、いくつかの化合物で粉末中性子回折測定を行うことで、CuとMとがそれぞれ独立したサイトを占めることが決定できた。また、常磁性領域で測定したプロファイルと低温で測定したプロファイルとを比較すると、低温では磁気反射が観測され長距離磁気秩序を示していることも明らかになった。しかしながら、それぞれの磁気構造はMによって異なり2次元構造に由来する変調構造を取ることを見出した。酸素位置も厳密に求まったことから第一原理計算も行い、電子構造も求めた。低温での磁気転移はそれぞれMによって異なるd軌道、すなわちCrの場合にはdxy軌道、Mnの場合にはdz2軌道、Feの場合にはdx2-y2軌道が重要な役割を果たすことを見出した。
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