研究課題/領域番号 |
15K05445
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
崎山 博史 山形大学, 理学部, 准教授 (20253396)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スピン軌道相互作用 / 五核コバルト(II)錯体 / 磁気解析ソフトウェア / 三核コバルト(II)錯体 / 高スピン鉄(II)錯体 / 二核コバルト(II)錯体 / ヘテロ構造 / 磁化率理論式 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,三核コバルト(II)錯体の磁化率解析ソフトウェアの開発や三核コバルト(II)構造から成るポリマー化合物の磁気解析結果等について論文発表した。また,ヘテロ構造を有する二核コバルト(II)錯体の磁気解析等について学会発表をおこなった。さらに,五核コバルト(II)錯体の磁化率解析ソフトウェアならびに高スピン鉄(II)錯体の磁化率解析ソフトウェアを開発した。
1.「五核コバルト(II)錯体」については,対称性と相互作用の様式が異なる四種の五核コバルト(II)錯体について,スピン軌道相互作用を考慮した磁化率の近似式を導出し,解析用ソフトウェアMagSaki(Penta)を開発した。また更に,一つのコバルト(II)イオンだけ状態が異なる場合(スピン軌道角運動量が消失した場合や程度の異なるスピン軌道相互作用が働いた場合)についても磁化率の式を導出し,解析ソフトウェアに実装した。 2.「高スピン鉄(II)錯体」については,四回軸方向のひずみ(D4h対称)とスピン軌道相互作用を考慮した磁化率の理論式の導出に成功し,磁気解析ソフトウェアMagSaki(FeII)の開発にも成功した。 3.「ヘテロ構造を持つ高スピンコバルト(II)二核錯体」については,合成した二つの化合物の結晶構造解析を実施し,いずれも異なる配位環境を有するヘテロ二核構造(五配位三方両錐型と六配位正八面体型)であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度の研究実施計画(1~3)の進捗状況は以下の通りであり,2,3については予定通り,1については計画以上に進展している。
1.「五核コバルト(II)錯体」については,当初の予定通り五つのコバルト(II)イオンが四角錐の頂点に配置した構造(C4v 対称とC2v 対称)および三方両錐の頂点に位置した構造(D3d 対称とC3v 対称)について,スピン軌道相互作用を考慮した磁化率の近似式を導出し,解析用ソフトウェアMagSaki(Penta)を開発した。また更に,一つのコバルト(II)イオンだけ状態が異なる場合(スピン軌道角運動量が消失した場合や程度の異なるスピン軌道相互作用が働いた場合)についても磁化率の式を導出し,解析ソフトウェアに実装した。 2.「高スピン鉄(II)錯体」については,当初の予定通り四回軸方向のひずみとスピン軌道相互作用を考慮した磁化率の理論式の導出に成功し,磁気解析ソフトウェアMagSaki(FeII)の開発にも成功した。 3.「ヘテロ構造を持つ高スピンコバルト(II)二核錯体」については,合成した二つの化合物の結晶構造解析を実施し,いずれも異なる配位環境を有するヘテロ二核構造(五配位三方両錐型と六配位正八面体型)であることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
これまで磁化率の温度依存性を解析するソフトウェアを開発してきたが,基底状態を確認するためには磁化の磁場依存性についても解析することが望ましいため,当初の平成28年度の研究実施計画に加えて,磁化曲線のシミュレーションをおこなう。
1.五核コバルト(II)錯体については,平成27年度に開発した磁気解析ソフトウェアを用いて既存データの磁気解析をおこない,構造と磁気的性質の関係を明らかにする。また,平成27年度に新たに合成したヘテロ構造を持つ高スピンコバルト(II)二核錯体についても磁気測定と磁気解析をおこなう。 2.一次元コバルト錯体については,コバルトイオン間を架橋性配位子で連結することで一次元鎖状錯体を各種合成し,またその部分構造となる二核錯体および単核錯体を合成する。得られた錯体について結晶構造解析をおこない,磁気測定に適した試料を準備する。 3.高スピン鉄(II)錯体については,新しく錯体を合成し,平成27年度に開発した磁気解析ソフトウェアを用いて磁気解析をおこなう。また,鉄(III)低スピン単核錯体について,磁化率の理論式の導出をおこない,プログラミングと磁気解析ソフトウェアの開発をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
錯体の合成や再結晶をおこなうために高圧反応容器の購入を考えたが,予算残額が不足していたため,次年度予算と合わせて購入することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
高圧反応容器購入に充てる。
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