研究実績の概要 |
本研究では、ガラシクロペンタジエン誘導体の合成、構造、反応性、および光特性について明らかにすることを目的とする。ガラシクロペンタジエンは、4パイ電子系化合物であるボラシクロペンタジエンの高周期類縁体であり、その性質を明らかにすることは含13族元素環状ジエン化合物の性質を解明する基礎的知見を与えるため重要である。ガラシクロペンタジエンは、対応する環状ジルコニウム錯体とハロゲン化ガランとのトランスメタル化により合成できることを見出した。ガリウム上に環状カルベンが配位したガラシクロペンタジエン誘導体のX線結晶構造解析の結果から、ジエン部位の炭素-炭素二重結合長および炭素-炭素単結合長は、それぞれ対応する一般的な値を示し結合交替があることが分かった。ガラシクロペンタジエンの反応性として、ルイス塩基および求核試薬との反応の検討した。ルイス塩基としてとして三級ホスフィンを用いた場合には、リン上の置換基の嵩高さにより反応性が異なることが分かった。嵩高いホスフィンの場合にはガリウムへの配位が進行し、5員環誘導体が生成する。一方、立体的に小さい置換基を有するホスフィンの場合には、5員環誘導体に加えて、ガラシクロペンタジエンが二量化し、10員環構造を有する5,10-ジガラシクロデカテトラエン誘導体も生成することが分かった。類似の10員環化合物は、ガラシクロペンタジエンとピリジン誘導体との反応でも生成した。ガラシクロペンタジエンと求核試薬との反応では、ガリウムを1つ含む9員環構造にガリレンが架橋したビシクロ化合物が得られた。ガラシクロペンタジエンの環拡大反応は前例がなく、反応経路や生成する含ガリウム中員環化合物の物性に興味が持たれる。
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