研究課題/領域番号 |
15K05449
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
植村 一広 岐阜大学, 工学部, 准教授 (60386638)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 一次元鎖 / 多核錯体 / 金属結合 / スピン |
研究実績の概要 |
cis-[Pt(NH3)2(NHCOtBu)2]とFe(II)Cl2、もしくはFe(III)(ClO4)3から白金-鉄三核錯体の合成を試みた。cis-[Pt(NH3)2(NHCOtBu)2]、Fe(II)Cl2、NaClO4を水-MeOH混合溶媒で撹拌すると、黄色粉末が析出した。単結晶X線構造解析の結果、[PtFe(piam)2(NH3)2(OCH3)2]2(ClO4)2 (1)の組成をもち、Pt-Fe複核錯体がメトキシド架橋された四核錯体であることがわかった。また、cis-[Pt(NH3)2(NHCOtBu)2]とFe(III)(ClO4)3を水-MeOH混合溶媒で撹拌し、ゆっくり蒸発させると、赤色微結晶の[Pt2Fe(piam)4(NH3)4](ClO4)3 (2)が析出した。2は、Pt(II)-Fe(III)-Pt(II)の酸化状態を有する三核構造であることがわかっている。1と2の、XPS測定、ESR測定、磁化率測定の結果、1と2中の鉄は、いずれも、+3のハイスピン状態であることが示唆された。1の粉末のESRシグナルは観測されず、メトキシド架橋による反強磁性的相互作用のためと考えられる。磁化率測定でも高温域からの磁化率の減少がみられ、比較的強い反強磁性的相互作用があることがわかった。また、1と2のCH3CN中でのサイクリックボルタンメトリーの結果、それぞれ、-0.23 V (vs Fe+/Fe)と-0.18 V (vs Fe+/Fe)に可逆な酸化還元波がみられた。 続いて、2と[Rh2(O2CCH3)4](酢酸ロジウム)を混合し、Pt-Fe-Pt-Rh2-Pt-Fe-Ptと並んだ一次元多核錯体の合成を試みた。溶媒はMeOH、EtOH、Me2CO、THF、MeCNとし、カウンターイオンとして、NaNO3、NaClO4、NaPF6、NaCF3CO2、NaCF3SO3を添加したが、希望の単結晶を得ることができていない。2と[Rh2(O2CCH3)4]を混合したMeOH溶液の経時変化を、ESRで追跡したところ、ESRシグナルが時間とともに減少した。また、溶液を蒸発すると1の単結晶が析出した。このことから、2に[Rh2(O2CCH3)4]を加えると、1とPt-Rh-Rh-Pt四核錯体が生成することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
cis-[Pt(NH3)2(NHCOtBu)2]とFe(II)Cl2、もしくはFe(III)(ClO4)3から、白金-鉄多核錯体を確かに合成できていること、また、それらの諸物性を追跡し、多核錯体中の酸化状態とスピン状態を明らかにしている。また、[Rh2(O2CCH3)4]と混合すると、Pt-Rh結合が形成することがわかっている。しかし、Pt-Rh結合することで、Pt-Fe間が不安定となるので、反応条件の見直しが必要となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2と[Rh2(O2CCH3)4]から1とPt-Rh-Rh-Pt四核錯体の反応が進行することがわかっている。2の酸化状態はPt(II)-Fe(III)-Pt(II)なので、2を1電子還元したPt(II)-Fe(II)-Pt(II)を単離し、[Rh2(O2CCH3)4]との一次元多核化をねらう。その際、合成を嫌気下でおこない、溶媒や温度、濃度、塩の添加を最適化する。また、1と[Rh2(O2CCH3)4]を多核化することもおこなう。1と2中の配位子のNH3を、エチレンジアミン(en)に変えて、キレート配位による安定化を図る。また、架橋配位子のNHCOtBuをNHCOCH3にし、溶解度に関する検討もする。
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