研究課題/領域番号 |
15K05449
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
植村 一広 岐阜大学, 工学部, 准教授 (60386638)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 一次元鎖 / 多核錯体 / 金属結合 / スピン |
研究実績の概要 |
平成28年度は、以下の2つに関して実験を進めた。 1. cis-[PtCl2(NCtBu)2]とtrans-[PtCl2(NCtBu)2]を合成し、CuCl2をMeOH中1:1で混合し、KOHを加えると、緑色結晶の1と青緑色結晶の2が析出した。単結晶X線構造解析の結果、1はpiamによりPtとCuがシス位で架橋され、複核化していた。さらに、-OCH3で架橋し、全体で環状四核構造を形成していた。一方、2では、PtとCuがpiamと-OCH3によって架橋され、Cu-Pt-Cuと三核化していた。さらに、Cuを-OCH3が架橋して, 全体で環状六核構造を形成していた。1の300 KでのχMTは0.78 cm3mol-1Kで、四核構造あたり2つの不対電子があることがわかった。この値は低温までほぼ一定で、10 K以下でわずかな減少がみられ、J = -0.22 cm-1と、銅間で非常に弱い反強磁性的相互作用を示すことがわかった。一方、2では、300 KでのχMTは0.32 cm3mol-1Kと、予想される六核構造あたり4つの不対電子よりも小さい値であった。χMTは100 Kまでゆるやかに減少し、50 K以下で急な減少がみられた。2中の銅は、隣接分子とアキシャル位で相互作用しており、これらを考慮したモデルでフィッティングすると、六核構造内の二核部位の銅間で、J = -46 cm-1と、比較的強い反強磁性的相互作用を示すことがわかった。 2. cis-[Pt(NH3)2(NHCOtBu)2]、Co(II)Cl2、NaPF6を水中で撹拌すると、薄紫色粉末の白金-コバルト三核錯体が析出した。CH3CN中のCV測定の結果、E1/2 = 0.5 V (vs. Fc/Fc+)に、準可逆的な酸化還元波がみられた。また、[Rh2(O2CCH3)4](酢酸ロジウム)と混合すると、一次元鎖化することも見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度までは、白金-鉄三核錯体を中心に合成を進めていたが、希釈溶媒中で三核構造を維持できず、分解することを昨年度見出した。そこで、鉄よりも原子番号が1つ上のコバルトを用いて、新たに合成検討をしたところ、白金-コバルト三核錯体を確かに合成できたこと、さらに、比較的低電位で準可逆な酸化還元波がみられたことから、目的達成に近づいたと考えている。また、白金-コバルト三核錯体と酢酸ロジウムを混合して、幾つかの一次元鎖錯体の合成にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
白金-コバルト三核錯体と酢酸ロジウムからなる一次元鎖錯体の、XPSと帯磁率等の物性測定をすることで、各金属の酸化状態とスピン状態を明らかにする。また、不対電子間の相互作用の強さを評価する。また、新規合成では、白金-コバルト三核錯体と[Ru2(O2CCH3)4](酢酸ルテニウム)、マンガンを用いた白金-マンガン三核錯体と、扱う金属を変えて一連の一次元鎖錯体を合成していく。
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