本研究は、白金HOMOのdz2軌道とロジウムLUMOのdz2軌道とのHOMO-LUMO相互作用で繋げた異種金属一次元多核錯体を、M(+2) <--> M(+3)の二重交換相互作用を利用して強磁性体にすることを目的とした。cis-[Pt(NH3)2(NHCOtBu)2]とFe(III)(ClO4)3からPt-Fe-Ptと並んだ白金-鉄三核錯体を合成した。この三核錯体中のFeは、+3のハイスピンで、サイクリックボルタンメトリーにより、-0.19 V (vs Fe+/Fe)で可逆に酸化還元可能であることを確かめた。これと[Rh2(O2CCH3)4]を混合すると、Pt-Rh-Rh-Ptと並んだ四核錯体が生成した。次に、cis-[Pt(NH3)2(NHCOtBu)2]とCo(II)Cl2からPt-Co-Ptと並んだ白金-コバルト三核錯体を合成した。この三核錯体中のCoは、+2のハイスピンで、サイクリックボルタンメトリーにより、0.43 V (vs Fe+/Fe)で、可逆に酸化還元可能であることを確かめた。これと[Rh2(O2CCH3)4]を混合し、-Rh-Rh-Pt-Co-Pt-と並んだ一次元鎖錯体の合成と単結晶X線構造解析に成功した。この一次元鎖錯体中のCoも、+2のハイスピンで、3つの不対電子を有することがわかった。磁化率測定の結果、原料の白金-コバルト三核錯体に比べ、高温域からxT値の減少がみられ、異種金属結合を介し反強磁性相互作用が働くことを確認した。さらに、cis-[PtCl2(NCtBu)2]とtrans-[PtCl2(NCtBu)2]を合成し、MeOH中で、CuCl2とKOHと混合することで、環状Pt-Cu-Pt-Cu四核錯体および環状Pt-Cu-Cu-Pt-Cu-Cu六核錯体の合成と単結晶X線構造解析に成功した。
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