研究実績の概要 |
本年度の研究により、以下の成果が得られた。 (1)TQENを基盤とした七座配位子TQOPEN (N,N,N’,N’-tetrakis(2-quinolylmethyl)-3-oxa-1,5-pentanediamine)、TQNPEN (N,N,N’,N’-tetrakis(2-quinolylmethyl)-3-aza-1,5-pentanediamine)、およびTQSPEN (N,N,N’,N’-tetrakis(2-quinolylmethyl)-3-thia-1,5-pentanediamine)において、カドミウムイオンに特異的な蛍光応答が見られた。 (2)TQOPEN、TQNPEN、TQSPENは細胞に取り込まれにくく、細胞内のカドミウムイオンの検出には適していなかった.そこで、TQNPENの中心に存在する窒素原子にリンカーを介して糖分子を連結した誘導体を合成し、それらを用いることによりHeLa細胞中におけるカドミウムイオンの蛍光イメージングに成功した。 研究期間全体を通じて、環境中および生体中に存在する金属イオンおよびアニオン種を検出する手法の開発を研究してきた。本研究では特に、キノリンの特性を活用した特異的蛍光センサーについて研究を行い、カドミウムイオン、亜鉛イオン、リン酸を厳密に区別できる化合物をいくつか開発した。連結鎖長、連結鎖に存在する配位原子の種類および数、キノリン環に存在する置換基の種類及び数、キノリンからイソキノリンへの変換等により、特定金属イオンおよびアニオンへの特異性を向上させることができた。また、その特異性発現のメカニズムをX線結晶構造解析および理論計算から明らかにした。
|