研究課題/領域番号 |
15K05455
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
砂月 幸成 岡山大学, 自然生命科学研究支援センター, 助教 (80362987)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 三重らせん型鉄(II)錯体 / 水素結合 / 三次元集積化構造 / 分子取り込み能 / キラル認識 / スピンクロスオーバー |
研究実績の概要 |
ジ(4-アミノフェニル)エーテルと4-ホルミルイミダゾールを1:2で反応させたビス二座型配位子を用いた三重らせん型鉄(II)2核錯体を水素結合を用いて自己組織化させた三次元集積化錯体の隙間の空間を利用し、キラル認識を実現するとともに、鉄(II)のスピンクロスオーバーを利用した分子センサーの開発を目指したが、この2核錯体はイミダゾールのpKaが高く、水素結合形成のための部分的脱プロトン化が出来なかった。そこでジ(4-アミノフェニル)エーテルを直鎖アルカンの両末端にアミノ基を持つジアミンに変えた新たなビス2座型配位子を設計し、三重らせん型2核錯体の合成を試みた。合成は困難で、単一の生成物を単離するに至らなかった。これは、新たに設計した配位子のアルキル鎖が構造的柔軟性を持つことに加え、fac型、mer型どちらの配位構造も取りうることが原因と考えた。そこで4-ホルミルイミダゾールを2-メチル-4-ホルミルイミダゾールに変えた配位子を設計し、三重らせん型2核錯体の合成を試みているところである。申請者は、熊本大学の松本らとの共同研究で2-メチル-4-ホルミルイミダゾールとモノアミンの脱水縮合で得られる2座シッフ塩基配位子がfac型配位を好むことを明らかにしてきた。合成条件を詳細に検討し速やかに目的化合物の合成を行い、集積化錯体の合成につなげたい。 またこの新しい配位子と関連して、2-メチル-4-ホルミルイミダゾールとプロピルアミンの脱水縮合で得られる2座シッフ塩基配位子の単核鉄(II)錯体が2つの結晶多型を持ち、それらを作り分けることが出来ることと、いずれの多型もスキャンレート依存性を持つ、珍しいスピンクロスオーバー挙動を示すことを明らかにした。この結果は分子磁性国際会議ICMM2016で発表するとともに、論文をPolyhedronのICMM2016特集号に投稿し、掲載が許可された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初用いていたジ(4-アミノフェニル)エーテルと4-ホルミルイミダゾールを1:2で反応させたビス二座型配位子は比較的剛直な分子であるため、三重らせん型鉄(II)2核錯体の合成には適していたが、イミダゾールのpKaが高く、水素結合形成のための部分的脱プロトン化が出来なかった。そこでジ(4-アミノフェニル)エーテルを直鎖アルカンの両末端にアミノ基を持つジアミンに変えた新たなビス2座型配位子を設計し、目的の三重らせん型2核錯体の合成を試みたが、現在まで単一の生成物を単離するに至っていない。これは、この配位子はアルキル鎖が柔軟な構造を持つのに加えて、金属イオンに対してfac型、mer型どちらでも配位することが出来るため、多様な生成物を同時に形成してしまうためだと予想された。そこで、4-ホルミルイミダゾールをモノアミンとの脱水縮合で得られる2座シッフ塩基配位子がfac型配位を好む2-メチル-4-ホルミルイミダゾールに変え、直鎖アルカンのジアミンと反応させて得られる配位子を設計、合成し、現在これを用いた三重らせん型鉄(II)およびコバルト(III)2核錯体の合成を試みているところである。 また、この間に2-メチル-4-ホルミルイミダゾールとプロピルアミンの脱水縮合で得られる2座シッフ塩基配位子の単核鉄(II)錯体のスピンクロスオーバー挙動に関する研究を行った。本研究課題の目的からは回り道になったが、この研究では現在検討している配位子と関連が深い配位子を用いており、本研究課題の鉄(II)錯体のスピンクロスオーバーを利用した分子センサー構築に関して、参考となるデータを得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
三重らせん型2核錯体を形成するのに最適なアルキル鎖長や合成条件を精査し、できるだけ速やかに目的錯体を合成し、その構造と性質を明らかにする。得られた三重らせん2核錯体を部分的に脱プロトン化することで事故相補的水素結合による三次元集積化を実現し、その集積化錯体の構造を明らかにするとともに、集積化錯体の構造の隙間の空間への他の化合物、特にキラル化合物の取り込み挙動を検討する。三重らせん型2核錯体は、部分的脱プロトン化の後も陽イオン性の錯体であることが予想されるため、キラルな化合物としては以前に三脚型配位子の系でも用いたトリスオキサラト錯体をカウンター陰イオンとして取り込むことをまず検討し、さらにキラルな有機化合物の取り込みへと発展させたいと考えている。さらに鉄の2核錯体を用い、そのスピンクロスオーバー挙動を利用した分子センサー機能について詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に「人件費・謝金」と「その他}の項目に該当する支出がなかったため、その分を主に物品費として使用した。当該年度末に未使用であった約25000円は、無理に使用して無駄な出費になることを避けるために次年度使用額とした。
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次年度使用額の使用計画 |
研究課題の実施に必要な試薬・器具の購入に充てる
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