研究課題/領域番号 |
15K05456
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
馬越 啓介 長崎大学, 工学研究科, 教授 (20213481)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 酸化チタン / 光触媒 / 混合金属錯体 / 白金 / 銀 / 錯体化学 |
研究実績の概要 |
申請者らは,以前合成した強発光性混合金属錯体 [Pt2Ag4(Me2pz)8], [Pt2Au2(bpy)2(3-t-Bupz)4](PF6)2を酸化チタン被覆石英粉末に担持し,JIS規格に準拠した方法でメチレンブルーの分解反応速度を調べたところ,これらの強発光性混合金属錯体を担持しない酸化チタン被覆石英粉末に比べて飛躍的な触媒活性の向上が見られた。また,これらの混合金属錯体を担持した酸化チタン被覆石英粉末を焼成したところ,さらなる光触媒活性の向上が観測された。 以上のような知見をもとに,初年度は,申請者らがこれまでに開発した混合金属錯体のうち,最も強発光性の錯体[Pt2Ag4(Me2pz)8]を用いて,酸化チタン被覆石英粉末に対して強発光性混合金属錯体をどの程度担持した場合に触媒活性が最大になるか,定量的な検討を行った。その結果,[Pt2Ag4(Me2pz)8]を担持した状態で触媒活性を調べる際には0.5%担持した場合の活性が最大になった。また,[Pt2Ag4(Me2pz)8]を担持後に焼成する場合には,0.3%の担持させた場合に触媒活性が最大になり,焼成しない場合に比べて,焼成した場合の方が触媒活性が増大することが明らかになった。 さらに,酸化チタン被覆石英粉末に担持する金属ソースとしての混合金属錯体の優位性を明らかにするために,H2PtCl6・6H2OとAgBF4を1:2の比で均一に担持した試料の触媒活性も調べた。その結果,混合金属錯体を担持した場合の方が,単純な金属塩の混合物を担持するよりも,有意の差で触媒活性が高いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,初年度は,申請者らがこれまでに開発した混合金属錯体のうち,強発光性錯体のバリエーションを広げて酸化チタン被覆石英粉末に固定化し,それらの発光特性の調査と光触媒の表面構造の観察を行う予定であった。しかし,実験を進める過程で,最も触媒活性が高くなる担持条件を先に検討し,その状態の表面構造を知ることが重要であるとの考えに至り,本年度は,申請者らがこれまでに開発した混合金属錯体のうち最も強発光性の錯体[Pt2Ag4(Me2pz)8]を用いて,混合金属錯体の担持条件の検討から開始した。そして,酸化チタン被覆石英粉末に対して強発光性混合金属錯体をどの程度担持した場合に触媒活性が最大になるか定量的な検討を行い,実験条件の最適化をはかることに成功した。また,焼成しない場合に比べて,焼成した場合の方が触媒活性が増大することも明らかにできた。さらに,酸化チタン被覆石英粉末に担持する金属ソースとしては,単純な金属塩の混合物を担持するよりも,混合金属錯体を担持する方が活性が高いことも明らかにした。 次年度以降に検討する予定の案件を先に検討しているが,研究全体としては概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,混合金属錯体のバリエーションを広げて酸化チタン被覆石英粉末に固定化し,それらの発光特性(発光寿命,発光量子収率など)がどのように変化するかを明らかにするとともに,混合金属錯体を担持した酸化チタン被覆石英粉末の焼成を行い,XAFSによる金属間距離の解明や,TEM・SEMなどの電子顕微鏡観察により,光触媒の表面構造を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を遂行するために必要な実験器具および試薬等の購入,および学内共同利用施設の機器使用料に当初の計画より多く経費がかかることが予測された時点で,次年度以降の予算から50万円の前倒し支払い請求を行った。しかし,実際に当初予算を超過して使用しなければならなかった額が50万円を下回ったため,147,068円の使用残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の使用残金は,28年度の物品費に組み込み,試薬等の購入にあてる予定である。
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