研究課題/領域番号 |
15K05457
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
竹本 真 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20347511)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | カーバイド / ルテニウム / 二核錯体 / カルベン / メチリジン / クラスター |
研究実績の概要 |
カーバイド配位子は1個~8個の金属に配位することが可能であり、多様な構造の錯体を形成する。カーバイド配位子は、多核クラスター構造を安定化する架橋配位子として利用されるとともに、一酸化炭素の水素化(Fischer-Tropsch反応)におけるCO結合の切断およびCC結合の形成に関連して興味が持たれてきた。最近、窒素固定酵素ニトロゲナーゼの活性中心にカーバイド配位子を有する鉄クラスターが含まれることが明らかにされ、支持配位子としてのカーバイド配位子の機能に対する関心が高まっている。 本研究では、申請者らが最近合成に成功した二核ルテニウムカーバイド錯体をメタロリガンド(含金属配位子)として三核以上の核数を有し、興味ある構造的特徴を有する様々なカーバイド錯体を合成するとともに、錯体の反応性をはじめとする諸性質の解明を通じて、カーバイド配位子の支持配位子としての機能を明らかにすることを目的としている。 昨年度までに二核ルテニウムカーバイド錯体を炭素供与配位子とする11族金属(Cu, Ag, Au)錯体を合成し、CuおよびAu錯体については単結晶X線構造解析による構造の解明に成功していた。また、その構造とDFT計算により、二核ルテニウムカーバイド錯体がNヘテロサイクリックカルベンと同様の配位様式およびより高い電子供与性を示すことを見出していた。 本年度は、より高い核数を持つカーバイド錯体の合成への展開を目指し、従来ルテニウムの支持配位子として用いていたペンタメチルシクロペンタジエニル配位子のかわりに、より小さな無置換のシクロペンタジエニル配位子を有する二核ルテニウムカーバイド錯体の合成を検討した。その結果、二核ルテニウムカーバイド錯体の前駆体となるメチリジン錯体および二核ルテニウムカーバイド錯体を配位子とする銅錯体の合成に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、昨年度までに合成に成功していた二核ルテニウムカーバイド錯体を炭素供与配位子とする11族金属(Cu, Ag, Au)錯体の反応性および触媒活性を明らかにすることを目的の一つに掲げていた。反応性として、Cu上での配位子置換反応を見出したが、触媒反応の発見には至っていない。この点については来年度以降引き続き検討を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに得られている二核ルテニウムカーバイド錯体を炭素供与配位子とする11族金属(Cu, Ag, Au)錯体を利用した触媒反応の開発に取り組む。特に、二核ルテニウムカーバイド錯体の強い電子供与能を活かして、既存のNヘテロサイクリックカルベン錯体では実現困難な触媒反応の達成を目指す。
また、本年度に新たに合成に成功した、コンパクトな無置換のシクロペンタジエニル配位子を有する二核ルテニウムカーバイド錯体をビルディングブロックとした多核カーバイド錯体の合成に取り組む。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、昨年度までに合成に成功していた二核ルテニウムカーバイド錯体を炭素供与配位子とする11族金属(Cu, Ag, Au)錯体の反応性および触媒活性を明らかにすることを目的の一つに掲げていたが、触媒反応の発見には至らず、その研究に関する実験の進捗に遅れが生じたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
二核ルテニウムカーバイド錯体を炭素供与配位子とする11族金属(Cu, Ag, Au)錯体を利用した触媒反応の開発のための実験を行うために使用する。
|