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カーバイド配位子は多様な配位様式をとるが、その電子供与性やトランス効果など金属中心の反応性に与える効果についてはほとんど解明されていない。最近では、窒素固定酵素の活性中心にカーバイド配位子が見出され、触媒活性な金属への支持配位子としてのカーバイド配位子の役割に興味が持たれている。研究代表者は、求核性カルベンに類似した電子状態を有する2核ルテニウムカーバイド錯体およびその白金付加体である三方平面型Ru2Pt異種三核カーバイド錯体など、遷移金属カーバイド錯体の化学における前例のない構造を見出してきた。本研究では、これらの成果を触媒活性種の構築という観点からさらに発展させ、カーバイド配位子の支持配位子としての特性を明らかにすることを目的とした。その結果、カチオン性の二核ルテニウムメチリジン錯体を種々の金属塩の存在下に脱プロトン化することで、二核ルテニウムカーバイド錯体（メタロカルベン）を発生させながらカーバイド炭素上に異種金属ユニットを導入する合成法を開発することに成功した。さらに、Cp* のかわりに Cp を支持配位子とするメチリジン、カーバイド錯体の合成に着手し、最近これを達成した。現在、二分子の二核メチリジン錯体を金属テンプレート上に集積化することに成功し、C + CH 結合形成反応を検討している。また、CpRu 錯体の合成の過程で μ4-O 配位子を持つ四核クラスターを合成し、四核以上の核数のカーバイドクラスターの構築に向けた手がかりを得るとともに、架橋イミド配位子の置換による硫黄配位子の導入についても予備的成果を得ており、窒素固定酵素の活性中心モデルを志向した遷移金属カーバイドクラスターの創出に向けた有力な手がかりもつかんだ。
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