研究課題/領域番号 |
15K05458
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
亀尾 肇 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50597218)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 無機化学 / 有機金属化学 / 錯体化学 / イリジウム錯体 / 結合切断 / Si-F 結合 |
研究実績の概要 |
遷移金属錯体は、精緻な分子設計によって多様な触媒反応の開発を可能にしてきた。これまでの遷移金属錯体は、L 型(2 電子供与)もしくは X 型(1 電子供与)配位子の機能によって、多様な反応性を獲得してきた。その一方で、0 電子供与配位子に分類されるσ電子受容性(Z 型)配位子の機能開発については、いまだ緒についたばかりである。
これまでにσ電子受容性(Z 型)ボラン配位子が既存の配位子ないユニークな特長(① 受容性配位子ながら非常に強いトランス効果を発現すること、② 中心金属の Lewis 塩基性に応答して、M→B 相互作用を介した電子受容量を柔軟に大きく変化すること (リン配位子の3倍の高い電子調整能))を有することを報告している。
本研究では、これらの特徴を活かしたσ電子受容性(Z 型)配位子の機能開発に取り組んだ。通常、遷移金属中心を含むσ結合メタセシス反応では、金属中心は Lewis 酸、配位子は Lewis 塩基として機能する。一方、電子受容性配位子を含むσ結合メタセシス反応では、金属中心は Lewis 塩基、配位子は Lewis 酸として機能して、逆の電子移動が誘起される。そこで、今回その電子移動に注目して、イリジウムヒドリド錯体による Si-F, Si-Cl, Ge-F, Ge-Cl 結合の切断反応を開発した。これらの反応は、遷移金属錯体によってフルオロシランの Si-F 結合、フルオロゲルマンの Ge-F 結合が始めて切断された例である。また、DFT 計算を用いて、これらの切断機構の詳細を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遷移金属錯体を用いた初めての Si-F および Ge-F 結合の切断反応を開発することができた。これまで困難と見なされていた Si-F 結合などの触媒的な変換反応が、それらの切断反応を発展させることで達成できる。そのため、今年度に得られた知見は非常に重要であるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
触媒反応への展開を図るため、Pd などの 10 族金属錯体を用いた Si-F, Ge-F 結合の切断反応を開発する。さらに、有機亜鉛試薬、有機ホウ素試薬を添加することで、続く Si-C, Ge-C 結合の形成反応を開発する。これらの素反応を触媒反応に適用して、有用な化合物の触媒的合成法を確立する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
少額の予算のみが残ったことから、次年度の予算と合算して物品を購入した方が有効な使用法になると判断した。
|
次年度使用額の使用計画 |
消耗品の購入に使用する。
|