研究実績の概要 |
イミド架橋配位不飽和2核ルテニウム錯体 [(Cp*Ru)2(μ-NPh)(μ-CH2)] (1a; Cp* = η5-C5Me5)のルテニウム―窒素多重結合に対する一連のブレンステッド酸中のE-H結合の付加反応が進行し、対応するアミド架橋錯体が生成することを明らかにした。1とTfOH (Tf = SO2CF3)、HCl、RCOOH (R = Me, Ph)、RSO2NH2(R = Ph, C6H4Me-p)、PriOH、HCCR (R = C6H4Me-p, CO2Me)とは室温程度の温和な条件下で速やかに進行し、μ-NHPh配位子とμ-E配位子(E = OSO2CF3, Cl, OCOR, NHSO2R, H, またはCCR)とを有する2核錯体2、3,4,5,6,7が良好な収率で得られた。生成物の各々についてX線解析を行い、それらの構造の詳細を明らかにした。4~7のルテニウム―ルテニウム間結合距離は架橋配位子の種類によって異なり、2.46~2.68Åの範囲に観測された。一方、1と BH3・THFとの反応においては、B-H結合は開裂せず、代わってB-N結合が形成されたイミド―ボラン付加体[(Cp*Ru)2(μ-H3BNPh)(μ-CH2)] (8)が高収率で得られた。X線構造解析の結果、B-N結合の生成を確認するとともに、8中の3つのB-H結合のうちの2つが、ホウ素原子とルテニウム中心との間を水素原子が架橋した構造の形成に伴って弱められていることが判明した。 また、イミド窒素上にtBu基を導入した[(Cp*Ru)2(μ-NtBu)(μ-CH2)] (1b)を新たに合成し、イミド架橋配位不飽和2核ルテニウム錯体上でのN-H還元的脱離に及ぼすイミド窒素上の置換基の電子的、立体的影響について検討を進める足掛かりが得られた。
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