研究実績の概要 |
2核ルテニウム錯体上でのN-H結合切断反応を経て生成する架橋メチリジン錯体の反応性に関して詳細に検討した。その結果、 [(Cp*Ru)2(μ-NtBu)(μ-CH)][BF4] (Cp* = η5-C5Me5) に対して、CuCN、AgOTfまたはAuCl(SMe2)の存在下で2当量のKN(SiMe3)2を反応させることにより、三方平面型架橋カーバイド配位子を有する新規な混合金属3核錯体[(Cp*Ru)2(μ-NtBu)(μ3-C)M{N(SiMe3)2}] (M = Cu (4), Ag (5), and Au (6))が得られることを見出し、錯体4、6についてはX線解析により構造の詳細を明らかにした。これらの化合物中の金属―カーバイド炭素結合はN-ヘテロ環カルベン配位子(NHC)を有する錯体(NHC)M{N(SiMe3)2} (M = Cu and Au)における金属―カーバイド炭素結合ときわめて類似しており、 [(Cp*Ru)2(μ-NtBu)(μ-C)] フラグメントがNHC配位子に対応するものであることが示唆された。錯体4をC6H3(OH)-But2-2,6と反応させると、アミド配位子のプロトン化を経る配位子交換反応が進行し、[(Cp*Ru)2(μNtBu)(μ3-C)Cu(OAr)] (7; Ar = 2,6-tBu2C6H3)が生成した。錯体6についてもX線解析を行い、構造の詳細を明らかにした。さらに、[(Cp*Ru)2(μ-NtBu)(μ-C)] フラグメントの電子供与脳と立体的なかさ高さに関して計算科学的手法により解析を行った。
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