研究実績の概要 |
本研究では、従来達成されていなかったカリックスアレーンの環内CH2基のCH結合活性化を遷移金属錯体を用いて行わせ、新規なO,C,O-三座配位子を開発すること、そしてその配位子を持つ有機金属錯体の特性を明らかにすることを目的としている。前年度までにO,C,O-三座配位型のカリックス[4]アレーン配位子を含む錯体[Cp*Ir{(C6H2tBu)4(CH)(CH2)3(O)(OH)3}] (1-Ir, 1-Rh)の合成法を確立したので、平成29年度にはまず錯体1とアルキンの反応を検討した。1-Rhではアルキンの取り込みは進行しなかったが、1-Irは末端アルキン類RCCH (R = Ph, COOMe, nBu)と反応し、いずれの場合もAr-CH間のC-Cが開裂してアルキンが挿入したπ-アリル型錯体[Cp*Ir{(C6H2tBu-CH2)3(C6H2tBu-CR=CH-CH)(O)(OH)3}]が得られた。反応機構解明には至っていないものの、C-C結合を含む極めて特異な反応が進行しており、興味深い。一方、1とニトリル等の含窒素不飽和化合物の反応、並びに水素、ヒドロシランの反応も検討したが、新規錯体の生成は認められず、それを基礎とした1の触媒反応への利用には至らなかった。 一方、カリックス[8]アレーンを用いて[Cp*M(OAc)2] (M = Ir, Rh)との反応を行ったところ、環内メチレンのCH結合を二重に活性化した極めて特異な二核カルベン錯体[(Cp*Ir)2{(C6H2tBu)8(C)(CH2)8(O)2(OH)6}]が得られた。また、この錯体に[Rh(cod)]+を配位させた誘導体について、予備的なデータながら、構造を決定できた。イリジウム二核コアはカリックス[8]アレーンのキャビティ内部でカルベン炭素に結合しており、キャビティサイズが本錯体の生成に影響したと考えている。
|