研究課題/領域番号 |
15K05465
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
保田 諭 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (90400639)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 酸素還元 / グラフェン |
研究実績の概要 |
昨年度は、カーボンナノチューブ(CNT)表面上に酸素還元活性サイトである鉄-窒素-ナノグラフェン(Fe-N-ナノグラフェン)が被覆したFe-N-ナノグラフェン/CNT触媒の作製に成功し、その触媒が高い酸素還元活性能を有することを明らかにした。さらなる高活性化のため、活性サイトの定量的評価手法の確立を試みた。その結果、電気化学的手法であるサイクリックボルタモグラムおよび対流ボルタモグラムから、触媒活性に重要なパラメータである、触媒の表面積と活性サイト数、活性サイト密度、触媒回転頻度を定量的に算出可能であることを示した。この手法によって、長時間高温加熱での作製プロセスでは、Feがナノ微粒子化して活性サイト数が減少し酸素還元活性が低下することや、加熱プロセスによって活性サイトの触媒回転頻度が異なることも明らかにした。また、メスバウアー分光法からも、高活性および不活性な活性サイトが混在して生成していること、高活性な活性サイトの生成数も触媒作製条件に依存することも明らかにした。以上、電気化学およびメスバウアー分光法によって、触媒活性に重要なパラメータを定量的に評価可能であることを示し、高活性化のための設計指針を得た。 また、触媒高耐久化に関する基礎的研究も行った。酸素還元反応時における、活性サイトの電気化学的酸化や還元による分解・溶解を抑制することを目的に、Fe-N-ナノグラフェン/CNT触媒表面上にシリカを被覆することを試みた結果、前駆体濃度や反応時間を制御することで、表面上に被覆可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
電気化学的手法によって活性サイト数やその密度、触媒回転頻度といった酸素還元活性能に重要なパラメータを定量的に見積もることが可能であることを明らかにした。この評価手法から、触媒作製プロセスによってこれらパラメータが大きく依存することを見出し、高活性化のための設計指針を得ることができた。また、触媒高耐久化に関する基礎的研究も進め、触媒表面上に耐久性向上を目的としたシリカを被覆することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の定量評価技術を用いて、さらなる高活化のための作製プロセスを新たに試み、高活性CNT触媒を作製する。また、シリカを被覆したCNT触媒の耐久性実験も行い、実用化のための基礎的な知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度における研究が予想以上に順調に進み、予定していた予算をすべて使用する必要性がなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の研究計画である、さらなる高活性化とシリカコートによる高耐久化・酸素還元活性能評価のために予算を使用し、研究計画を以上の成果を得るために有効利用する予定である。
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